前回、自分なりの『メトロイド ドレッド』プレイ感想記事を書いた。これから遊ぶ人に配慮してネタバレ要素は抑えた。つもり。
今回の記事では、ネタバレ全開な『ドレッド』プレイ感想・考察を記しておきたい。普段の自分はネタバレ記事は絶対書かない主義なのだが…今回は特別である。
というのも、今作のストーリーは謎が謎を呼ぶというか、考察のしがいがあり過ぎるというか…ネタバレ込みで語らないと頭の整理がつかないのだ。答え合わせをしたい。
気づけば2022年。発売から既に4ヶ月以上経ったワケだし、ネタバレ解禁しても許されるだろう。どうかこの哀れなオタクの戯言にお付き合い頂きたい。メッチャ長いです(約20,000文字)
【※注意※】この記事には『メトロイド ドレッド』(および歴代『メトロイド』シリーズ) のネタバレが大量に含まれています。未プレイの人はブラウザバック推奨です。
『メトロイド ドレッド』考察・ネタバレ感想
自分の『ドレッド』発売前予想
遡ること2021年10月…『ドレッド』発売直前、自分はこんなストーリー予想を立てていた。
ハダセンおじさん率いるZDRの鳥人族は一族の復権、宇宙征服を企む過激なヤツらで、生体兵器の開発やら自身の肉体改造やらを惜しまず行い、最後のパズルのピースを揃えるためにサムスさんを誘き寄せ、DNAなり何なりを奪おうとしてる説を俺は推す(ストーリー予想)
— わたりどりぃ㊗ドレッド楽しい (@Wata_Ridley) 2021年10月4日
ここで言ってる「ハダセンおじさん」とは、ゲーム冒頭でサムスに襲い掛かる「謎の鳥人戦士」の仮称である。当時は名前が伏せられていたので勝手にあだ名を付けた。
彼の発した言葉「HADAR SEN OLMEN (ハダール セン オルメン)」が、NNの由来。2ndトレーラーが発表された8月末、公式サイトでこの台詞が公開されていた。
(何か重要な台詞っぽくて気になってたのよね…)
すまねぇ、チョウゾ語はさっぱりなんだ… pic.twitter.com/lCQv4b0kJ0
— わたりどりぃ🍁ドレッド楽しい (@Wata_Ridley) 2021年8月27日
このハダセンおじさんだが…実は過去作品で既に登場済み。2017年発売の3DSソフト『サムスリターンズ』である。
本作には「チョウゾメモリー」という、達成率に応じてアートが解禁されるオマケ特典がある。
ゲームの舞台「惑星SR388」で起きた出来事をイラストを通して鑑賞・考察できるギャラリーモードなのだが…最後に解禁される10枚目のアートにヤツは居たのだ。
暴走したメトロイドを惑星の地下に封じ込めた鳥人族。その後、首脳っぽい鳥人達が集まり、何やら会談する様子が描かれている。平和で穏やかなイラストだ。
しかし、アートを眺めていると…事態は急変。
BGMが止まり、画面全体が真っ赤に染まり上がる。不気味でおどろおどろしい空気が漂う中、隠された "11枚目のアート" が姿をあらわす。
そこには…甲冑を纏いアームキャノンを発砲して同族を皆殺しにする鳥人戦士の姿が克明に描かれていた。辺り一面、血の海である。ホラー耐性ゼロの自分は、あまりの怖さに心停止しかけた。怖すぎ。
鳥人族はサムスの育ての親であり、平和を愛する温厚な種族!というのが、それまでの『メトロイド』シリーズの常識だった。だが…その大前提を根底から覆される超ショッキングな演出だったのだ。
この鳥人戦士 (= ハダセンおじさん) の行動については、かれこれ数年間、ファンの間で様々な考察がなされてきた。武闘派鳥人族の謀反説、Xに寄生されてた説、第三勢力のスパイ説…色々である。
そして…2021年8月に公開された2ndトレーラーで、ヤツが『ドレッド』本編に登場することが確定したのだった。ついに謎が明かされる時が来たのだ。
ハダセンおじさんに関して、自分の発売前予想はこうだった。
まず、鳥人族にはいくつか派閥があり、過激派集団のリーダーがハダセンおじさんではないか?と考察した。そう考えれば、鳥人族は平和を愛する種族!という既知の設定を崩さない。「チョウゾメモリー」での仲間割れにも納得がいく。
そして…ハダセンおじさんは軍事力で世界を征服・衰退した一族の復権を狙っているのではないか?と予想した。その目的達成の手駒として、メトロイドを生物兵器として利用したいのでは?とも考えた。
そう考えた理由の1つが、E.M.M.I. である。
事前公開された情報から、E.M.M.I. はDNA採取に特化した調査ロボットだと判明していた。サムスを執拗に付け狙うのは…サムスの体内にある「メトロイドDNA」の採取が目的なんじゃね?と推測したのだ。
(多分『フュージョン』遊んだファンは大体同じこと考えたハズ)
メトロイドは僅かな細胞片からでも復元・クローン生成が可能なことが『フュージョン』『Other M』等の描写から分かっている。
銀河連邦軍過激派とハダセンおじさんが結託。サムスを惑星ZDRにおびき寄せ、事故に偽装して殺害。サムスの体内からDNAを抽出して、メトロイドを復活させる計画なのでは?…自分の発売前予想はそんな感じであった。
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解明された「チョウゾメモリー」の謎
『ドレッド』クリア済みの方なら、お分かり頂けるだろう。自分の予想は半分正解で半分間違っていた。
まず、自分がハダセンおじさんと呼んでいた謎の鳥人戦士。
彼の名は「レイヴンビーク」といい、力による圧政・世界征服を目論む武闘派鳥人族「マオキン族」のリーダーだった。シンプルに強くて悪い敵である。『メトロイド』では珍しい。
※ちなみに気になってた台詞「HADAR SEN OLMEN」は…「力こそ全て」という意味だった。人柄が現れすぎだろ。
レイヴンビークは、メトロイドを手中に収め、生体兵器として利用したかったらしい。E.M.M.I. が制御を失い、サムスを追い回していたのは…案の定、メトロイドDNAの採取が目的だったのだ。この辺は予想通り。
ただ…自分の予想に反した展開も多かった。
まず E.M.M.I. 暴走の件について。自分は「まーたどうせ連邦の仕業やろ」と思ってたのだが…今回 銀河連邦は無関係というか、むしろ被害者だった。
事故に見せかけてサムスを殺害!なんてことは (多分) 考えてなかったようで、一方的に E.M.M.I. をハッキング・悪用され散々な目に遭っていた様子。ここは自分の予想と全然違ってた。連邦!疑ってゴメンネ!
また自分は頭が悪いので、レイヴンビークが何故こんな回りくどい作戦ばかり取ってるのか?という点には考えが及ばなかった。冷静に考えると妙である。
レイヴンビークは、サムスを圧倒する程の戦闘力を有していた。ならば E.M.M.I. なんか使わずとも、自らの手でサムスを殺害・直接メトロイドDNAを奪えたのでは?
大体、そんなに強いのなら…惑星SR388に直接殴り込んでメトロイドを自力で捕獲できたのでは?
「チョウゾメモリー」で、SR388に遊びに来てたじゃない。その足で捕獲作戦も敢行すれば良かったんじゃ…というか何故仲間の鳥人族を惨殺したんだ? 疑問は尽きない。
『ドレッド』本編では、こうした疑問に対するアンサーも丁寧に描写されていた。
まず、レイヴンビークが最初の戦闘でサムスを殺さなかった理由。それは…彼女の体内にある「メトロイドDNA」の覚醒を予見したからだった。
メトロイドの体質・特性を引き継いだサムスは「エネルギー吸収能力」も継承していたらしい。様々な要因が働き、これまで発現せず抑制されていたのだが…レイヴンビークとの戦闘を通して、眠っていた能力が覚醒し始めたのだ*1。
エネルギー吸収能力を持つメトロイドは、生物兵器として魅力的な反面、コントロールが難しい!という致命的欠陥があった。
『メトロイドプライム』では、パイレーツ戦闘員がメトロイドに襲われるのがお約束だったし、他作品でもメトロイドの兵器化計画はことごとく失敗している。とにかく制御が難しいのだ。
だが、メトロイドと同じ能力を持つ "人間" であればどうだろう?
意志疎通ができる分、いくらか制御しやすい。懐柔・洗脳・従順なクローンを作ったりと、色々と措置が取れる。レイヴンビークは、そこに目を付けたのだ。
サムスを適当に泳がせておき、E.M.M.I. や凶暴なクリーチャー、ロボット兵器を仕向けさせ、戦わせる。度重なる戦闘でストレスを与え、能力が完全に覚醒する機会を虎視眈々と待っていたのだ。
エネルギー吸収能力が発現したら、サムスを仲間に引き入れる。うまくいかなかったら傀儡にするか、メトロイドDNAだけ回収すれば良い。そういう算段だったらしい。なるほどね。
さらに「チョウゾメモリー」の謎 (仲間の鳥人族を殺した経緯、SR388でメトロイドを捕獲しなかった理由) についても、詳しい説明があった。
まず、鳥人族には2種類の部族がいた。
研究者寄りの「ソウハ族」と、戦士寄りの「マオキン族」である。SR388では、この2つの部族が協力し、暴走したメトロイドの鎮圧作戦を行ったのだ。
メトロイドを地下に封じ込めた後、SR388は極秘裏に爆破される予定だった。制御不能となったメトロイドを惑星諸共破壊しよう!というブッ飛んだ計画である。ソウハ族が立案したのだろう。やることが極端。
しかし、メトロイドを無事に回収するまでは、SR388を破壊させるワケにはいかない。
レイヴンビークはそう考え、仲間のソウハ族を惨殺、計画を強行阻止したのだった。これが「チョウゾメモリー」の真相である。
ただ、その後レイヴンビーク達はSR388を去り、母星 (惑星ZDR) に帰還していた。メトロイドを安全に回収するため、一旦 拠点に戻って準備を進める予定だったらしい。用意周到。
しかし、ここでアクシデント発生。帰還した部下の中に擬態した「X」が紛れていたのだ。な…なんだってー!
Xは瞬く間に増殖。部下のマオキン兵士達は、Xの餌食となり全滅。レイヴンビークは事態の収拾に追われ、メトロイド捕獲計画を中断せざるを得なかった。
孤軍奮闘の末、何とかXを封じ込めた (!) レイヴンビークは計画を再開しようとしたが…それが丁度『サムスリターンズ』<エピソード2> の時期だったらしい。サムスの活躍によって、SR388のメトロイドは既に殲滅されていたのだった。
ほどなくして、メトロイドは完全に絶滅。このためレイヴンビークは、惑星ZDRにサムスを誘い込みDNAを奪う!といった、ジュラル星人並みに 回りくどい作戦を敢行するしかなかったのだ。そんな事情があったのね…(同情)
この辺の話は、レイヴンビークに拉致されたソウハ族の科学者「クワイエットローブ」によって語られるのだが…初見プレイ時に聞いたときは「うおぉ…」と感嘆の声が漏れた。じんわりとした感動。
歴代シリーズで断片的に語られていた世界観設定、1つ1つが点に過ぎず、謎も多かったストーリーが…今作でカチッと噛み合い、うまく繋がったように感じたのだ。全5エピソードから成る『2Dメトロイドサーガ』誕生の瞬間である。
一時期は新作が全然発売されず「このままシリーズは終焉を迎えるのか…」と悲しみに暮れた時期もあったが…『2Dメトロイド』は完全復活を遂げ、謎に満ちたストーリーにも区切りが付いたのだ!
まさかこんな日が来るだなんて…(´;ω;`)ブワッ
そして、我らが主人公「サムス・アラン」は…全てを悟った上で、こう発言する。
う〜ん…良い…!!!
全てを終わらせる。作中唯一サムスが喋るシーンで、この台詞ですよ。
たとえ報酬がリスクに見合わない危険なミッションでも、自分の育ての親である鳥人族が敵に回っても…彼女は敢然と立ち向かうのである。自らの意志で。宇宙の平和の為に。銀河の守り手として。
いやぁ〜本当マジで最高だな。一生推す。サムスしか勝たん…(キモオタ)
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『フュージョン』要素・過去作リスペクトに感動!
寄生擬態生物「X」の再登場にも驚かされた。存在が仄めかされてたけど、まさか本当に生き残っていたとは…
X (エックス) は、SR388の原生生物。寄生・擬態を繰り返し、際限なく増殖していく "生ける宇宙の脅威" だ。『フュージョン』<エピソード4> でサムスの活躍により、惑星ごと爆破され絶滅した。…ハズだった。
Xは生き残っていた。前述の経緯で、サムスがSR388を爆破する遥か昔に惑星ZDRに持ち込まれていたのである。コレはマジで衝撃だった。
『ドレッド』発売前、自分もXの再登場は予想していた。ただ、もし出るなら「SA-X」が登場するんじゃないか?と踏んでいた。
その根拠としていたのが、ゲーム発売前に公開された映像「恐怖の片鱗」である。
今回の「メトロイド ドレッド レポート」では、サムスを襲う絶望を「恐怖の片鱗」映像として掲載しています。#MetroidDread pic.twitter.com/gDdcPqaN0V
— 任天堂株式会社 (@Nintendo) 2021年8月6日
この映像の24秒辺りで、本当に一瞬なのだが、我々メトロイダーが恐怖してやまない、あのSA-Xの姿が映っていたのだ。Twitterでファンが大騒ぎしてたの覚えている。
『メトロイド』シリーズでは強敵に追跡され逃げる!といった緊迫する場面が多い。中でも最恐最悪…『フュージョン』を遊んだ全人類のトラウマ…恐怖の原体験とでも言うべき存在が、このSA-Xと言える。
『ドレッド』は "恐怖" を売りにしたゲームだ。E.M.M.I. の対処に慣れた頃合いにSA-Xを登場させ、昔懐かし恐怖の鬼ごっこをやらせる!そんな展開があってもおかしくはない。
『ドレッド』発売前、ゲーム冒頭でサムスの体内で何らかの変化が起き、装備を喪失するらしいことも判明していた。
サムスの体内に吸収されたハズのSA-Xが何らかの原因でサムスから分離して、惑星ZDRで活動を再開したと考えれば、この弱体化現象に関しても辻褄が合う!
すなわち『ドレッド』の "恐怖" とは!復活した宿敵「SA-X」と再び対峙する "恐怖" に違いない!!…というのが自分の発売前予想だった。
結局、自分の予想は大きく外れた。SA-XはOP映像でチョロッと出ただけで、ゲーム中には一切登場しなかった。サムス弱体化の原因も全然違った。
だが…寄生擬態生物「X」は再登場を果たし、シナリオにもガッツリ絡んできたのでホント最高であった。ゲーム中盤、要塞施設「エルン」に封印されていたXが解き放たれ、ZDRの原生生物に成り代わる*2。
どこからともなく飛来して別の生物に擬態!禍々しい強化形態!複数のDNAを掛け合わせたハイブリッド個体!撃破してもすぐ別の生物に変身して襲い掛かる!
『フュージョン』で描写されたXの恐るべき生態が、最新ビジュアルで徹底表現されていたのだ。再現度の高さに背筋がゾクゾクしたよね。もう感激。
自分の興奮が頂点に達したのが、ボス「エスキュー」戦である。
甲虫型クリーチャー (クエツォア) の親玉で、強力な電撃弾・ミサイル型誘導弾を放ち、プレイヤーを攪乱する。初見では大苦戦して、何度もゲームオーバーになった。
何回目かのチャレンジでやっと撃破できたのだが…ここで驚きの展開が。エスキューが擬態を解き「コア-X」に変身したのだ!
コア-X!! 俺は…コイツとの戦い方を知っている!!!
刹那、自分の脳内に在りし日の『フュージョン』プレイ時の記憶が、走馬灯のように流れ込んで来た。
コア-Xは外殻を持つ巨大なX。ボス級クリーチャーに擬態している。突進はジャンプで回避可能。弱点はミサイル。ビーム照射でXを放出・補給ができる!
そして…殻を破壊して中身を吸収すると…サムスの潜在能力が覚醒するッ!!
「ストームミサイル」獲得!!!
思った通り。『フュージョン』の時と全く同じ流れでコア-Xを倒せた!
いやぁ~過去作リスペクトが凄まじい。おかげで昔のプレイ経験が活きる。まるで自分が、歴戦のバウンティ・ハンターになったかのような錯覚を覚えた瞬間であった。
他にも『ドレッド』には過去作リスペクト…特に『フュージョン』を意識した要素が詰め込まれていてファンには堪らない。
アダムの状況説明を聞く ⇒ エリア探索 の流れはマジで懐かしさを覚えて歓喜で震えたし、Xが打倒サムスの為にタービンを停止させ、惑星環境を寒冷化させる生存戦略を取ったのは、紛れもなく『フュージョン』劇中のそれと同じであった。
2年前の記事で言及したが…『ドレッド』を手掛けたMercury Steam開発陣は、元々『フュージョン』のリメイクを作りたかったという逸話がある。
大人の事情でその願望は叶わなかった訳だが…今回の『ドレッド』では、彼らの "フュージョン愛" がこれでもか!と言うほど炸裂していると感じた。リスペクトが徹底した理想的な続編。感謝してもしきれない。
というか…Mercury Steam製『フュージョン』リメイクは遊びたいッ!!!
いや~絶対面白いでしょ。約束された神ゲー。アクション難易度が跳ね上がり、SA-Xの追跡パートがトラウマ級の怖さになりそうな気がしてならないケド。
どれだけ時間が掛かって構わない!是非とも実現して頂きたい…(無茶振り)
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レイヴンビークとサムスの関係性
レイヴンビークとの最終決戦、ラストの怒涛の展開には驚きっぱなしだった。情報過多が過ぎる。初見プレイ時には色々な感情の波に襲われて昇天した。
中でも衝撃的だったのが…レイヴンビークが言い放った、この台詞であろう。
えぇーッ!?娘!?ご家族だったの!!?
そう、レイヴンビークは、サムスさんの父親だったらしい。あまりに突然のカミングアウトで驚愕した。お前はシスの暗黒卿かよ。
直後、回想ムービーが挿入される。
鳥人族が見守る中、巨大タンクの中で生体調整を受ける若き日のサムス。そして…その光景をじっと眺めるレイヴンビーク。両者の心臓・右腕がハイライトされた映像描写もあった。
どうやら、サムスさんはレイヴンビークのDNAを譲り受けていたらしい。血縁関係にある訳ではなく、力を分け与えた "義理の父" ということなのだろう。
ただ…長年のメトロイドファンからすると、この描写だけ見ると違和感があった。既知の設定と微妙に食い違っている気がしたのだ。
サムスの経歴・家族関係については、漫画版『メトロイド』や、コミック版『スーパーメトロイド』で詳細が語られている。ザックリまとめると以下の通り。
- 幼少期、スペースパイレーツの襲撃に遭い、実の両親 (ロッド・アラン/バージニア・アラン ) を殺される
- 唯一の生存者となったサムスは、救助に駆けつけた「鳥人族」に保護される
- 鳥人族の住む「惑星ゼーベス」に連れられたサムスは、環境適応のため、鳥人族 (グレイヴォイス) のDNA移植を受ける
- 成長したサムスは、鳥人族からパワードスーツを授かり、宇宙の巨悪と闘うようになる
エネルギー資源略奪のため、リドリー率いるパイレーツ部隊が、採掘惑星 (コロニー K2L) を襲撃。この戦火に巻き込まれ、当時3歳だったサムスは肉親を亡くしてしまう。
天涯孤独となったサムスは、救難信号を受信して駆けつけた「鳥人族」に保護され、彼らの住む「惑星ゼーベス」に移住する運びとなった。
だが…ゼーベスの環境は地球人にとっては過酷で、まだ子供だったサムスは生存が困難とされた。
そこでゼーベスでの生活を可能にすべく、サムスに鳥人族のDNAを移植 → 環境適応能力を高めたのだった。彼女の並外れた身体能力は、体内の鳥人族DNAに起因している。
この時サムスにDNAを提供したのは「グレイヴォイス」という鳥人族。
聡明で頭の切れるブレーン的存在。漫画版『メトロイド』では、サムスの成長を陰で見守る "第二の父親" として描写されている。
鳥人族のDNAを移植した!という話は、確かに共通している。しかし…漫画版『メトロイド』では、DNA提供者がレイヴンビークではないのだ。コレはどう解釈すべきなのか?
ここで注目したいのが、レイヴンビークがアダムを装い、サムスを懐柔しようとした際に発言した以下の台詞である*3。
メトロイドのDNAを持つ君の体質は、メトロイドそのものに変化したようだ。本来であれば、DNA移植後すぐに表れるべき変化であるはずだが…
君が有するソウハ族の遺伝子が抑制してきた結果だろう。彼らはメトロイドを制御できる唯一の民族だ。
DNAを持つとは言え君はソウハ族そのものではない。身体能力を鑑みるに、君はマオキン族のDNAも譲り受けているだろう。
『ドレッド』新設定によれば、サムスは2種類の鳥人族「マオキン族」「ソウハ族」双方のDNAを受け継いでいるというのだ。なるほど…これなら既知の設定と両立できる!
レイヴンビークは武闘派種族「マオキン族」の戦士。そして…漫画に出てくるグレイヴォイスは、頭脳明晰・科学者タイプの鳥人族だった。彼を「ソウハ族」と捉えれば、サムスが両方のDNAを有している点にも納得がいく。
そしてDNA譲与のタイミングだが…おそらく、サムスは鳥人族DNAを2回に分けて譲り受けている。以下の比較画像を見て欲しい。
漫画ではサムスが3歳の頃にDNA移植手術をしていた。しかし『ドレッド』回想シーンで手術を受けるサムスは、思春期の子供くらいの体格に見える。どうも手術タイミングが違う気がしてならない。
漫画の設定を活かすならば…こういう風に解釈できる。
- サムスがゼーベスに移住する際、環境適応のためグレイヴォイス (= ソウハ族) のDNAを移植
- サムスが成長した頃、戦闘能力を高めるためレイヴンビーク (=マオキン族) のDNAを移植
最初のDNA移植は、サムスがゼーベスに移住する際に行われた。漫画で描かれた環境適応を目的とした手術である。この時、グレイヴォイス (=ソウハ族) のDNAを譲り受けた。
そして、次に来るのが『ドレッド』回想シーンで描かれた手術である。サムスが成長した頃合いにレイヴンビーク (=マオキン族) のDNA移植が行われたのだ。
おそらく2回目のDNA移植は…サムスの戦闘能力を高めるために実施されたと思われる。マオキン族は好戦的な武闘派民族だ。サムスの底知れぬ強さの原動力が、マオキン族由来のものと考えれば合点がいく。
根拠もある。コミック版『スーパーメトロイド』では、幼き日のサムスが両親の仇…パイレーツに復讐心を燃やしており、そんな彼女に "力" を与えるべく鳥人族DNAを移植・パワードスーツを授けた逸話が語られている。
つまり、サムスの "戦う意志" を尊重した結果、2度目のDNA移植が行われたと解釈できる。
また、漫画作品に出てくる鳥人族 (≒ソウハ族) は非戦闘種族で、他者を傷つけると痛覚が刺激され、最悪死に至ることもある「心理プロテクト」を自らに施すなど、徹底した非暴力・平和主義の姿勢を見せていた。明らかに戦闘向きではない。
なので、サムスに "力" を与える際には、心理プロテクトが無く戦闘に特化したマオキン族のDNA移植が相応しい!という判断に至ったのだろう。思想の異なる両種族が協力して手術が行われたのだ。
サムスはソウハ族・マオキン族の両方の鳥人族に愛され、未来を託された子供だったのだろう。その結末が『ドレッド』の最終決戦。親子同士の壮絶な殺し合いなんですな。悲し過ぎる…
ところで。レイヴンビークの第二形態。背中から翼が生えた飛行形態。アレも漫画版『メトロイド』の再現だったりする。
鳥人族はかつて、高度なテクノロジー・戦闘能力で勢力圏を拡大。銀河で最も繁栄していた種族だった。しかし、高齢化・繁殖力低下が遠因となり衰退。ゲーム本編では完全に姿を消している…という設定がある。
漫画でこの辺の説明があるのだが…そこにアーマーを身に纏い翼で大空を舞う鳥人戦士が描かれているのだ。レイヴンビーク第二形態は、この描写の再現と見て相違ない*4。この辺からも、漫画の設定が死んでないことが見て取れる。
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『メトロイド』の主人公は、メトロイドである
驚愕の嵐だった『ドレッド』だが…極め付けが「メトロイドスーツ」であった。マジで何なんだアレ。
苛烈を極める最終決戦。レイヴンビークの体勢を崩したサムスは左手のエネルギー吸収能力を発動、トドメを刺そうとするが…あえなく失敗。動きを封じられ絶体絶命のピンチに陥る。
その時、不思議なことが起こった。瀕死状態だったサムスの体内でメトロイドDNAが暴走。奇跡のフォームチェンジを果たしたのだ。
メトロイドの生存本能…そして、平和を脅かす悪を絶対倒す!というサムスの強い意志が、眠っていた潜在能力を呼び覚ましたのだろう。
これにより形成は逆転。完全復活を遂げたサムスはレイヴンビークに掴み掛って叩き伏せ…空中要塞イトラシュ諸共、全エネルギーを吸い尽くしてしまったのだった。ひぇ〜…
う〜ん…禍々しい!!!
中々に凶悪なデザインである。全身を覆う緑色の刺々しい皮膚。鮮血のように真っ赤に染まったバイザー。随所から突き出す鋭い牙。触れただけでエネルギーを吸収する恐るべき能力。
"恐怖" を乗り越えサムスが辿り着いた到達点。その姿は紛うことなき「メトロイド」であった。こんな形でタイトル回収してくるとは…
『ゼルダの伝説』の主人公はゼルダではない。『パルテナの鏡』の主人公はパルテナではない。そして…『メトロイド』の主人公はメトロイドではない。ゲーマーの間で散々擦られてきた鉄板ネタである。
シリーズ最新作の『ドレッド』では、それが完全に覆されてしまった。『メトロイド』の主人公はメトロイドである。サムスに関して言えば、最早このネタは通用しない。
そもそもの話、約20年前の時点で「サムス・アラン ≒ メトロイド」ではあったのだ。『フュージョン』取扱説明書にこんな解説がある。
鳥人文明について残された文献に、興味深い記述が記されている。「メトロイド」という名前には、鳥人族の言葉で「最強なる戦士」という意味があるらしい。
そのメトロイドの遺伝子を継承し、生まれ変わったサムス・アラン。「メトロイド=最強なる戦士」の名はサムスにこそ、ふさわしい称号だと言えよう。
メトロイドDNAを体内に宿し、どんな困難なミッションも完遂してきた最強なる戦士。サムス・アランは名実ともに「メトロイド」となったのだ。『フュージョン』時点で語られていた話が、最新作『ドレッド』で見事に結実・昇華されたのである。う~ん…エモい…
それに…である。思い出して欲しい。サムスの体内に在るメトロイドDNAは、元を辿ればベビーメトロイドの細胞から生成されたものだ。
ベビーは『スーパーメトロイド』終盤、マザーブレインの攻撃から命を賭してサムスを守り、絶命した。続く『フュージョン』では、ベビーの細胞片から精製したワクチンで、Xに侵されたサムスの一命を取り留めた。
そして最新作『ドレッド』でも、メトロイドスーツを覚醒させることで、風前の灯火だったサムスの命を蘇らせたのだ。死してなお、ベビーは最愛の母親 = サムス・アランを支えてくれているのである。う~ん…エモいッ!エモ過ぎる!!涙なくして語れねぇよ…
肉親を殺され、多くの仲間が死に絶え、それでも前進を止めないサムス。そんな彼女には、死後も救いの手を差し伸べる存在がいるのだ。ベビー然り。アダム然り。
それをオカルト的なもので片付けず、細胞を体内に移植したとか、頭脳をコンピュータに移し替えたとか…割と現実味を帯びた形で表現してくる『メトロイド』シリーズが自分は大好きである。これまでも。この先も。死ぬまでずっと好きだと思うね。
『ドレッド』の描写を見る限り、今後もシリーズを存続させる!という、開発陣の力強い意志を感じた。おそらく遠からぬ内に続編が作られることだろう。
メトロイドと同化したサムス・アランが、一体この先どうなってしまうのか?…その行く末を、この目でしかと見届けたいと思う。
うん…そう思う…(しみじみ)
あ、もう1つ。またしても余談。メトロイドスーツのエネルギー吸収描写を最初に見たとき、自分の脳裏をよぎったもの。それは初代『メトロイド』の取扱説明書だった。
注目すべきはストーリー解説。以下の一節を読んで欲しい。
全身にサイボーグ強化手術をうけ超能力も身につけた人物で、敵のパワーを吸収する彼のスペース・スーツは海賊たちにも恐れられていた。しかし彼の真の正体はまったく謎に包まれていた。
昔、初めてコレを読んだときは「敵のパワーを吸収する…?」と疑問を覚えたものである。しかし、最新作『ドレッド』で、この記述がマジで実現してしまったのだ。敵のパワーを吸収するメトロイド・スーツである。
そう。メトロイドスーツの描写は、初代『メトロイド』説明書の35年越しの伏線回収だったんだよ!! な…なんだってー?
まぁ、脚本の人はそこまで考えてないと思うのだが…あまりにも奇妙な一致である。コレが壮大な伏線なのか、はたまた単なる偶然なのか…今後のシリーズ展開で判明するハズ。淡い期待を寄せたい*5。
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クワイエットローブの行動について
本作最大の謎。クワイエットローブの行動描写についても考察しなければならない。
イトラシュ墜落後、Xに寄生され巨大怪物に変異したレイヴンビーク。サムスが怪物をハイパービームで撃破すると自爆装置が作動。シリーズ定番の脱出シーケンスが始まる*6。
スターシップに乗り込み、惑星からの脱出を試みるサムス。しかし…シップの起動装置に手をかけようとした瞬間、アダムがそれを制止する。
そう。メトロイドDNAの暴走により、サムスさんは端末を操作できなくなってしまったのだ。手を触れた瞬間、彼女の意思に関わらず全エネルギーを吸い尽くしてしまう。
本作のスターシップは前作『フュージョン』と同じ機体。前作のラストで…このシップは手動操作でしか起動できないと判明している。
しかし、肝心の起動装置に手で触れることができないのだ。このままでは脱出不能。完全に "詰み" である。どうすんだ!?
その時、サムスの前に姿を見せたのが…ソウハ族の研究者「クワイエットローブ」であった。ゲーム中盤、事情を色々教えてくれた味方の鳥人族である。
ただ、本人は既に死亡しているため、Xが寄生・擬態したクワロブさんのゾンビである。背後から突然ヌッと出てくるもんだから初見プレイ時には超ビビった。
戦闘能力の低いソウハ族とは言え、相手はXの擬態。当然ながらサムスは警戒するのだが…クワロブさんは全く敵意を見せない。一体どうしたことか。
困惑するサムスをよそに…クワロブさんは胸に手を置き、深々とお辞儀をする。な…何故…?
そして、顔を上げ目を細めるような仕草をしたかと思うと…擬態を解いてゲル状のXに変身。Xはそのままサムスの胸に飛び込んだ!
すると驚いたことに…メトロイドスーツが解除され、瞬く間にサムスさんが元の姿に戻ったのだ。何ということでしょう。
どうやらXを吸収したことでメトロイドDNAの体内暴走が止まったらしい。何が起きたかサッパリ分からないが…ともかく今なら脱出できる!
サムスはすかさずシップを起動。爆破崩壊する惑星ZDRから間一髪で脱出したのだった。いや~ヨカッタヨカッタ。
このクワイエットローブの謎行動については、今なお多くのメトロイダー達が考察を繰り広げている。自分とて例外ではない。以下、私的考察を記しておきたい。
まず、メトロイドスーツが解除された理由について。コレは劇中で説明があるから簡単である。
ソウハ族のDNA (= クワロブに擬態したX) を取り込んだことで、サムスの体内のメトロイドDNAが抑制されたからだ。
本来、サムスのメトロイド同化現象は『フュージョン』でワクチンを投与した段階で、即座に引き起こされるべきものだった。しかし…サムスの体内にあるソウハ族のDNAが、それを抑制し続けていたらしい。
Xは過去に寄生した生物のDNA情報を記憶・保持できる。クワロブさんに擬態したXはソウハ族のDNAを継承しており、それをサムスが吸収したことで、メトロイドDNAの暴走が鈍化・メトロイドスーツが解除されたのだ。
では、Xが全く敵意を見せず、無抵抗のままサムスに吸収されたのは何故か?
何回観てもアレは…Xが自ら率先して、天敵のサムスに吸収されに行っているとしか思えない。吸収される = 彼らにとっての "死" を意味する。知的生命体にしては、あまりにも自虐的な行動だ(アダム)
コレについて、ネット上で興味深い仮説を見た。Xが天敵のメトロイド (= サムス) を無害化するため、ソウハ族のDNAを吸収させ暴走を止めようとした!という説だ。
無尽蔵に増殖を行うXは "個" の意識が低く、天敵を倒すためならば、手段を選ばない。
実際『フュージョン』劇中でも、B.S.Lのボイラーを故意に停止・室温を急上昇させ、大爆発を引き起こそうとするシーンがあった。
Xは施設を爆発させ、自ら命を絶とうとした訳だ。これは何故かというと、メトロイドの性質を受け継ぐ新たな天敵 (サムス・アラン) を確実に倒したかったからだ。
たとえB.S.LのXが死滅しても、惑星SR388に無数のXが残っていて種の絶滅は免れる…そういう理屈らしい。多少の犠牲を払ってでも、種の生存を脅かす危険分子を絶対に消し去る。それがXという生物なのだ。
こうした事例があるため、ソウハ族DNAを吸収させサムスを無害化しようとした…という仮説は一見すると信憑性が高い。しかし、自分はどうも別の理由があるような気がして仕方がない。
その根拠の1つが…Xが惑星ZDRから脱出している可能性が高い!ということだ。以下の比較画像を見て欲しい。
ハヌビアの背景には、いくつかの小型宇宙艇が配備されている。マオキン族の専用機と推測されるが…彼らは全員Xの餌食となったため、今となっては搭乗者がいない。
しかし、惑星から脱出する際に同じ背景をよく見ると…そこにあったハズの宇宙艇が残らず消え失せているのだ。
マオキン族が全滅している以上、宇宙艇を操作できる知的生命体はX以外に存在しえない。このことから、Xが宇宙艇に乗り込み脱出した可能性が浮上してくる*7。
そして…もしXが脱出に成功しているのであれば、サムスのメトロイドDNAが抑制・無害化されるのは、かえって都合が悪い。
メトロイドスーツのサムスは、彼女の意思に関係なく、手に触れたもの全てからエネルギーを吸い尽くしてしまう。これが原因でスターシップを起動できず、脱出が危ぶまれたことは、記憶に新しい。
Xからしてみれば、天敵のサムスが脱出不能となり勝手に自滅してくれた方が都合が良い。戦わずして勝つ。理想的な生存戦略だ。そこで敢えてソウハ族のDNAを取り込ませ、むざむざ脱出のチャンスを与える必要は無いだろう*8。
では…クワロブさんに擬態したXは、何故 無抵抗のままサムスに吸収されたのか?
自分の仮説はこうだ。
「鳥人族の霊体説」
霊体化したクワイエットローブの残留思念が、擬態したXを誘導して、サムスの惑星脱出をサポートした説である。これしかない。
そう。鳥人族の中には、霊体化して死後も生者に影響を及ぼす個体が存在する。
漫画版『メトロイド』では、サムスにDNAを提供した第二の父親「グレイヴォイス」が、物語の途中でパイレーツに惨殺される。しかし…彼は死後も残留思念となって現世に留まり続けていたのだ。
ゼーベスに単身潜入したサムスは、死んだハズの父親…グレイの残留思念と奇跡の再会を果たす。
戦いで傷つき憔悴しきっていた愛娘…サムスに対して、グレイは新装備「バリアスーツ」を授ける。娘の成長を喜ぶかのような遺言を残し、満足げな表情を見せた彼は、虚空の彼方へと消えていく。
…とまぁこんな感じで、一部の鳥人族は死後も思念体となり、メチャクチャ現世に干渉することが可能なのだ。会話もできるし武器も託せる。『スターウォーズ』のジェダイ的な。
漫画だけでなくゲーム本編でも同様の描写がある。『メトロイドプライム』では、鳥人族の強い残留思念が実体化した「チョウゾゴースト」という敵が登場する。
惑星ターロンⅣの神殿に封印したフェイゾン隕石が、悪しき者の手に渡る事態を何としても防ぎたい。
これを実現するため鳥人族が編み出したアイディアが…肉体を捨て幽霊となり神殿を守る!という突飛なものだった。チョウゾゴーストは、そんな鳥人族の成れの果てである。
チョウゾゴーストも、遺跡の侵入者を攻撃して退けるなど、霊体でありながらメチャクチャ現世に干渉してくる。この辺はグレイの残留思念と似ている。善悪の判断がつかず、味方のサムスも敵と認識して襲ってくるのだが。ダメじゃん…
そして『プライム』を遊んだ人ならご存じだろう。チョウゾゴーストは半位相的性質を持ち、可視⇔不可視の状態を行き来できる。
フッと姿を消し、通常の視界 (肉眼) では見えなくなる時があるのだ。神出鬼没。レーダーでも探知できない。彼らの動きを正確に視認・追跡するには、Xレイバイザーが必要となる。
ここで思い出して欲しいのが『フュージョン』中盤のイベントである。
アダムに「話があるから戻れ」と呼ばれ、スターシップまで引き返すと…サムスが救出した友好的生物「エテコーン」「ダチョラ」が船内で保護されている。温かく印象的なイベントだ。
この時アダムはエテコーン/ダチョラが "Xでないことを確認して" から保護したと語っている。納得の判断だろう。Xの侵入を許し、シップを不正に操作・破壊される事態があってはならない。
先にも述べたが『ドレッド』のスターシップは前作『フュージョン』と同一機体だ。シップに搭載されたコンピュータ (=アダム) や、船内の侵入者を検知・分析する機能は、そのまま継承されているハズ。
しかし…である。『ドレッド』終盤、クワロブさんに擬態したXは、アダムに検知されることなく操縦室に潜入していた。あれ…おかしいぞ…?
有能なアダムのことだ。Xの侵入を検知したら即座に警報を鳴らすなり、侵入者を撃退するなり、何らかの対抗措置を取るハズ。だがそんな猶予も与えず、クワロブさんはあの緩慢な動作で機内に入り込んで来たのだ。一体どんなマジックを使ったのだろう?
ここで自分の仮説が活きる。クワロブさんの残留思念がXを誘導・シップに潜入させたと考えると合点がいくのだ。
クワロブさんが死後に霊体化する能力を獲得しており、現世の物体 (= クワロブX) に憑依したと考えれば…チョウゾゴーストのような不可視状態・ジャミング等の手段を使い、アダムの侵入検知を妨害したとすれば…全て辻褄が合う!
そうまでしてクワロブさんが、擬態したXを誘導した理由はただ1つ。メトロイド化現象が止まらないサムスを元の姿に戻して、脱出の手助けをしたかったからだ。親心というヤツである。
ゲーム中盤、クワロブさんがサムスに全ての事情を説明し、みすみす闇討ちされ死亡したのも…死後霊体化してサムスを助けることができる!という自信の表れだったのかもしれない。あとは頼みましたよ、サムス*9。
ただ、この説はオカルトじみているというか…やや強引な理由付けをしている感が否めない。ここまで読んで「は?」と思った人も多いだろう。
では何故、自分がここまで鳥人族の霊体説を推すのか。それは…クワロブさんに擬態したXから "心" のようなものが垣間見えたからだ。
寄生擬態生物Xは、決して "心" や "感情" を持たない。コレは『フュージョン』劇中で明言されていて、大体その通りだった。以下、サムスさんの台詞の引用である。
Xは、寄生した相手の容姿を、知識を、力を貪欲に、そして正確にコピーする。
だが、奴らはけっして「心」をコピーしようとしない。
本能的に、ただその数を増やすことだけを目的とする奴らにとって、それは不要な…邪魔なものなのだろう。
しかし…である。クワロブさんに擬態したXは深々とお辞儀をした後、サムスを見てじっと目を細めるような仕草をした。この一連の動作からは…何というか…相手を慈しむ "感情" のようなものが見て取れる。俺だけかもしれないが。
お辞儀は、Xが宿主の記憶や行動を反復しているからだ。サムスに手を出さないのはソウハ族の心理プロテクトが働いているからだ。そういう反論もあるかもしれない。
ただ、自分はあのシーンを観て…鳥人族の深い愛情、クワロブさん本人がサムスを想いやる "心" のようなものを強く感じ取った。感動的なBGMも相まって、何だかそんな気がしてならないのだ。
Xが宿主 (=クワロブさん) の意思に屈して自我を獲得した!という捉え方もできるかもしれない。うーん…しかし…そんな陳腐なストーリー展開にはなって欲しくないというか…
Xが自我を持つとなると…心を持ったサムスが心を持たないXに打ち勝つ!という『フュージョン』の物語が無駄になるというか…何だか泥を塗るような行為に思えてならないのだ。『エイリアン2』に対する『3』みたいな。それは避けたい。
つまり…コレは1人の『メトロイド』ファンによる、どこまでも個人的な願望に過ぎない。
心を持たないXが、さながら心を持っているかのように振る舞い、敵対するサムスを救ってくれた。この謎に満ちた現象について、自分自身が納得できる落としどころを考えた結果…「鳥人族の霊体説」に辿り着いた。それだけである。
この先『ドレッド』続編が来れば、クワロブさんの行動の謎はおのずと解き明かされることだろう。公式見解がすべてだ。今後の『メトロイド』シリーズの動向に期待をかけたい。頼むぜ任天堂…!
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メトロイドの未来は明るい!
以上、メトロイドオタクによる『ドレッド』ネタバレ込み感想・ストーリー考察記事でした。毎回思うけど…文字数多過ぎ。
何でいつもこんな長文化するかな。おかげで文章をまとめるのに苦労した。昨年10月に『ドレッド』遊んだ直後に記事を書き始め…気づけば翌年2月になってるという。筆遅すぎて泣きそう。
それはさておき。最近の『メトロイド』界隈は未だかつてない盛況っぷりで確実に "波" が来ている。突然の供給過多に驚きを隠せない。歓喜の嵐。泣くほど嬉しい。
まず、シリーズ最新作『ドレッド』が過去最高級の売上を叩き出した。2022年2月時点の記録で世界累計売上が約274万本。完成度高いし、納得である。
https://t.co/dKEhlbuE6r
— わたりどりぃ㊗️サムス&ジョイ復刻 (@Wata_Ridley) 2022年2月3日
ドレッドめちゃ売れてますね…国内26万…世界累計274万… pic.twitter.com/PnFOndPdem
コレは歴代『メトロイド』シリーズの中で2番目に多いセールス。Switchタイトルはじわ売れする傾向があるので、シリーズ売上1位が『ドレッド』に変わるのも夢ではない。おそらく時間の問題だろう。マジで嬉しくてヤバイ(語彙力)
さらに…『ドレッド』人気の高まりに乗じて、歴代『メトロイド』作品が再評価される流れが生まれている。
『ドレッド』効果で中古ソフトの需要がグンと高騰していて、一時期は『フュージョン』『ゼロミッション』等のDLソフトが、常にWii U売上ランキング上位を占有していたほどだ。詳細は以下の記事が詳しい。
他にも一杯ある。『ドレッド』無料アップデート・DLコンテンツの配信。Nintendo Tokyoで日本限定『メトロイド』グッズが絶賛販売中。プレミア化が進み入手困難だった、漫画『サムス&ジョイ』の電子書籍化。さらに可動フィギュア『figma サムス Dread ver.』の発売が予定されている。
『メトロイド ドレッド』の無料アップデートが決定。
— 任天堂株式会社 (@Nintendo) 2022年2月9日
究極の難易度「ドレッドモード」や「ルーキーモード」が追加となる第1弾更新データは、このダイレクト終了後、ニンテンドーeショップで配信開始。#MetroidDread#NintendoDirectJP
[新商品]どちらのサムスがお好き?初代『メトロイド』Tシャツと最新作『#メトロイドドレッド』Tシャツを販売中。#NintendoTOKYO #マイニンテンドーストア #MetroidDreadhttps://t.co/x5LLHZ9rQX pic.twitter.com/X1h69CuKxI
— Nintendo TOKYO (@N_Officialstore) 2022年1月17日
ご報告!これまでの活動と皆様の応援のおかげで出月の悲願の一つが実を結びました! ありがとうございます。・:*+.\(( °ω° ))/.:+
— 出月こーじ (@moonup777) 2022年1月12日
また後日詳しく報告させて頂きます♪ pic.twitter.com/fCN1UIlqKv
🌟商品化決定🌟
— カホタン@グッスマのすみっこ (@gsc_kahotan) 2022年2月11日
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
figma
サムス・アラン DREAD ver.
_____________#MetroidDread #メトロイドドレッド #goodsmile #figma
▼#ワンホビ35 フォトギャラリーhttps://t.co/QjqHiNznut pic.twitter.com/DKpz8BdX0w
おい…おいおいおい…!!
一体何なんだこの突然の供給過多は!?
俺達を…メトロイドファンを殺す気なのか???
さらに加えると、待望の新作『メトロイドプライム4』の発売が控えている。
最近、開発元のレトロスタジオの公式Twitterのヘッダー画像が、ファンが見たことのない『メトロイド』関連アートに切り替わるなど、段々と "動き" を見せ始めた。もしかしたら…今年のE3辺りで続報があるかもしれない。期待して待とう。
そんな感じで…『メトロイド』の未来は明るい!
一時期は完全に沈黙していて不安で仕方が無かったが…見事に返り咲き完全復活を遂げたのだ。こんな日が来るとは。感謝しかない。ありがとう任天堂…Mercury Steam…(泣)
今後のシリーズ展開にも俄然、期待が高まる。サムス・アランの戦いは終わらない!!
あ、ちなみに当ブログで何度も紹介してる漫画版『メトロイド』だが…公式設定の塊みたいな重要書籍にも関わらず、プレミア化が進み今では入手が超困難。読みたくても気軽に読めない由々しき状況にある。
漫画の内容が気になる人は、是非 復刊ドットコムに投票して欲しい。現時点でファンがやれることは多分コレしかない。何卒ご協力ください。再販しないかなぁ…
*1:メトロイドDNAが覚醒した要因については、劇中で「メトロイドはマオキン族を敵とみなすようプログラムされているため」と説明されていた。コレについては、SR388産メトロイドが、生存本能によりマオキン族を後天的に敵とみなした…という意味合いだと自分は解釈している。
*2:レイヴンビークがエルンに封印したXを解き放った理由については、劇中で明らかにされていない。サムスを危機的状況に陥らせてストレスを与え、エネルギー吸収能力の発現を促進しようとしたのだと、自分は推測している。
*3:アダムはどこまでが本物だったのか?コレも『ドレッド』の謎の1つである。個人的には…最終決戦の直前以外は、アダム本人だったと信じたい。脱出の時にシップに手を触れようとした際に制止する辺り、全ての事情を把握してるっぽいし。OP以降サムスを「レディー」って呼んでないから、それからレイヴンビーク戦までは全て偽物だ!という人がいるが…無理がある気がする。
*4:漫画によると「鳥人族は遥か昔に翼を失い、飛べなくなった」とされている。この話が真実であれば、レイヴンビークは古株の鳥人族で、見た目以上に長命な可能性がある。もしくは、自身に肉体改造を施して、失われた飛行能力を取り戻した…という説も考えられる。
*5:マジレスすると、コレは敵を倒した時に出てくる「エネルギーボール」に触れると、サムスのライフエネルギーが回復する!というゲームシステムに関する説明と思われる。
*6:割と唐突に始まる脱出シーケンス。何故、自爆装置が作動したのかは定かでないが…おそらくレイヴンビークが仕掛けたものだろう。メトロイドDNA or サムスの死体を回収した後、Xが蔓延したZDRを爆破する予定だったのではなかろうか?
*7:ただし、サムスのエネルギー吸収能力の暴走で、空中に浮かんでいた宇宙艇が動力を失い、残らず墜落した…という可能性もゼロではない。どっちなんやろなぁ。
*8:Xの情報伝達速度は異常に速く、作戦変更を即座に行うことが可能だ。『フュージョン』劇中では、メトロイドの体質を受け継いだサムスを体内から冷却して倒すため、冷気を帯びた「コールドX」が登場する。当初はうまく作用していたが…その後、バリアスーツを取得したサムスは冷気耐性を獲得。コールドXの冷却効果を無視できるようになった。コレに気づいたコールドXは、積極的に吸収されに行くのをやめ、サムスから距離を置くようになる。この作戦変更のスピードがマジで速い。したがって、サムスが脱出不能になる方法が分かれば、即座に集団で対応可能なハズである。
*9:Xが寄生・擬態したクワロブさんは、即座にE.M.M.I.を起動してサムスをブッ殺そうとしていたが…コレはXの生存本能によるものだろう。擬態直後に発した「あとは頼みましたよ…」という台詞が妙に機械的だし。クワロブさん本人の意思は介在していないように感じる。