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コミュ障の鳥類が贈る雑記ブログ。

日米同時連載!コミック版『スーパーメトロイド』の魅力

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自分が愛してやまない『メトロイド』シリーズ。

 

銀河最強の賞金稼ぎ「サムス・アラン」の活躍を描き、重厚でハードな世界観設定が魅力。任天堂が世界に誇るSFゲームシリーズだ。当ブログでは多くの紹介記事を書かせて貰っている。

 

www.wata-ridley.com

 

そんな『メトロイド』だが、意外とメディアミクス作品が多く…漫画作品のバリエーションが豊富。ゲーム以外の媒体でもサムスさんの活躍が拝める。

 

今回はシリーズ黎明期に連載されていた…コミック版『スーパーメトロイド』をご紹介したい。

 

コミック版『スーパーメトロイド』

 

不朽の名作SFCソフト『スーパーメトロイド』の公式コミカライズ作品

 

原作ゲームと色々違ってて面白く、海外ファンの間では割と知られた作品だが…世間一般での知名度は低い。

 

なので、改めてその魅力を伝えてみたいと思う。『メトロイド』ってこんな漫画もあるんやな〜と気楽に読んで頂きたい。

 

※この記事には『スーパーメトロイド』のネタバレが含まれています。未プレイの人はSwitch Onlineに加入して是非遊んでください(布教)

 

 

コミック版『スーパーメトロイド』とは?

コミック版『スーパーメトロイド』は、同名ゲームの漫画化作品である。1994年に米ゲーム雑誌『Nintendo Power』で連載されていた。

 

実物がこちら。表紙に描かれたサムスの姿が美しい。

 

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1994年当時の『Nintendo Power』

 

そもそも『Nintendo Power』って何やねん!という人向けに補足説明。

 

ゲーム攻略情報や開発者インタビュー、ファンコミュニティ等が掲載された、アメリカの任天堂ファン向けゲーム月刊誌である。1988~2012年まで刊行。インターネットの台頭によって徐々に衰退。現在は廃刊となっている。

 

en.wikipedia.org

 

物凄くザックリ言い換えると…任天堂が自社ハードのゲームを信者に向けて大々的に宣伝するための月刊誌である。日本の『ニンテンドードリーム (ニンドリ)と性質がよく似ている。当初は Nintendo of America (NOA) の人達が直々に編集・発行していたそうな。

 

ゲーム攻略情報が充実している

 

刊行当時、アメリカの多くの少年少女がこの雑誌に夢中になっていた。ネットが無かった当時、ゲーム情報コミュニティはこれしか無かったのである。『Nintendo Power』には子供たちの夢と希望が詰まっていたのだ*1

 

コミック版『スパメト』は、1994年の原作ゲーム発売と同時期に連載スタート。『Nintendo Power』Vol.57 ~ 61掲載。全5話構成となっている。

 

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コミック版『スーパーメトロイド』 (全5話)

 

漫画の作画担当は伊藤あしゅら紅丸さん。当時のペンネームは伊藤紅丸。

 

任天堂コミカライズ作品を数多く手掛けてる敏腕アーティスト。代表作はコミック版『スターフォックス』や『MOTHER2 ギーグの逆襲 ネスの冒険記』など。

 

非常に多芸な方で、漫画以外でも『星のカービィシリーズ』イラスト提供だったり、『ポケモンスタジアム』3Dモデリング監修なんかもされている。

 

画像引用:「スターフォックス1+2」開発者インタビュー

 

あしゅらさんの絵柄はアメコミ調でダイナミック。迫力あるコマ割り、緻密で濃ゆい絵造りが特徴だ。オノマトペ・効果音なんかも英語で書かれている。パッと見、日本の漫画家さんが描いたものと分からない。

 

コミック版『スパメト』のサムスさんも例外ではなく、力強く格好良いアメコミ風女性キャラとして描かれている。

 

リアルで精悍な顔つき。凛々しいパワードスーツ姿。あまり日本人受けする感じの絵柄ではないが、原作の雰囲気に合っていて良いと思う。やっぱサムスさんはこうでなきゃな。

 

凛々しくて格好良い!神作画!

 

漫画のストーリー構成は、原作『スーパーメトロイド』と大体同じ

 

初代『メトロイド』でサムスが壊滅させたハズの宇宙海賊が完全復活。リドリー率いる海賊団がスペースコロニーの研究所を襲い、ベビーメトロイドを強奪。

 

攫われた最愛のベビーを取り戻すため、サムスは海賊の本拠地「ゼーベス」に急ぐが…彼女の健闘むなしくベビーは死亡。憎きパイレーツも壊滅。そんな話である*2

 

話の流れはゲームとほぼ同じ

 

こう書くと、何の変哲も無いコミカライズ作品に見えるが…実際に読んでみるとゲーム本編と色々違うと気づかされる。

 

特に顕著な違いが…サムスに仲間がいること。

 

サムスに仲間がいる!

 

『スーパメトロイド』は (というか『メトロイドシリーズ』全般は) サムス以外全員敵!という孤独感満載のゲームだが、コミック版はそうではない。

 

サムスと行動を共にするアームストロング・ヒューストンという賞金稼ぎがいる。

 

青色パワードスーツを装着した "偽サムス" みたいな人物。色々期待しちゃうが…中身は美女ではなく髭のおっさんである。

 

アームストロング・ヒューストン

 

小惑星帯でサムスに助けて貰って以来…銀河最強のサムスに強い憧れを抱き、パートナーになることを切望!というキャラ設定。青色パワードスーツも、サムスのスーツを模倣した自作装備らしい。ただの厄介オタクやんけ。

 

漫画の序盤では…サムスはヒューストンを冷たくあしらい全く相手にしない

 

ベテランのサムスとは違い、ヒューストンは単なるアマチュア賞金稼ぎ。銀河の平和を守る!といった使命感も無く、ただ賞金のおこぼれを狙ってサムスに付き纏っている節があった。

 

そのため、当初サムスはヒューストンのことを軽蔑。この2人の関係性が徐々に改善されていくのが漫画の見所の1つとなっている。

 

負傷したサムスを助けるヒューストン

 

他にも銀河連邦議長「キートン」や、連邦警察署長「ハーディ」等、それまで説明書に設定が載っている程度だった、銀河連邦のお偉方達も脇役として登場。漫画の後半には、鳥人族の長老「オールドバード」も活躍する。

 

これらの人物は漫画版『メトロイド』にも出てくる。漫画を読んだ人は見覚えがあるだろう。意外なことに…まだ世界観設定が固まってない黎明期、1994年時点で既にシリーズ登場済みだったのだ。結構キャラ違うけど。

 

後に漫画版『メトロイド』にも登場する人達

 

さらに本作では、サムスの出自設定についても言及がある。

 

サムスはパイレーツに両親を惨殺され、孤児となったところを鳥人族に保護され育てられた…という悲劇的過去を持つ。これは今なお続いている現行設定。シリーズ最新作『ドレッド』でも回収されていた。詳細は過去記事を。

 

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サムスの出自については、当ブログで度々紹介している漫画版『メトロイド』が詳しい。2003年に連載されてた、シリーズファン必携のバイブル的漫画である。自分もこの漫画を読んでサムスの過去を知ったクチである。

 

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サムスの過去が分かる!漫画版『メトロイド』

 

だが…1994年発売の『スーパーメトロイド』時点で、既にこの出自設定は固まっていたのだ。

 

コミック版『スパメト』中盤、戦闘中にサムスが負傷してしまい、治療の為に鳥人族の星を訪れる!という超展開が繰り広げられる。ここでサムスの育ての親「オールドバード」が登場。彼の口から直接、サムスの生い立ちが語られるのだ。

 

初めてサムスの過去が明かされた漫画!

 

リドリーがサムスの親を殺した!環境適応のため鳥人族のDNAを受け継いだ!

 

その辺の話はまだ無いものの…現行設定と殆ど変更が無く軸がブレてないのに驚かされる。

 

これが原点。そこに後付け設定で枝葉を付け足し、ストーリーに奥行きを出したのが、後発の漫画版『メトロイド』なのだ。

 

裏技「クリスタルフラッシュ」の原理解説も

 

他にも裏技「クリスタルフラッシュ」の原理解説があったり、リドリーが流暢に言葉を喋ったりと、面白い要素が盛り沢山。コミック版『スパメト』は、ゲームとは別の魅力を内包したユニークな作品と言えるだろう。

 

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コミック版『スーパーメトロイド』には日本語版があった!

そんなコミック版『スパメト』だが…日本語版コミックが存在する事実はあまり知られていない。

 

海外限定コミック!という印象が強い本作。実は1994年当時、翻訳されて日本でも連載されていたのだ。『Nintendo Power』と並行した日米同時連載である。

 

コミック版『スパメト』は日本語版も存在する

 

漫画が掲載されていたのはゲーム・オン!という知名度低めの雑誌。かつて小学館が出版していた総合ゲーム誌である。

 

あんまり長続きしなかった短命の雑誌で、1993年~1996年の約3年間しか刊行されていない。コミック版『スパメト』掲載号は1994年4月~8月号まで。全5冊となっている。

 

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日本のゲーム雑誌『ゲーム・オン!』

 

全編フルカラー印刷。漫画の小冊子がホチキス留めされていて、雑誌から切り離して別冊にできる!というコレクターに嬉しい仕様。表紙には描きおろし扉絵が描かれてたりと、中々気合いが入ってる。英語版より凝ってるかも。

 

漫画の内容自体は英語版と変わらない。英語の台詞を日本語に翻訳しただけ…なのだが、結構ニュアンスの違った台詞にローカライズされたりしてて面白いのだ。

 

真っ先に気づくのが、サムスの口の悪さ

 

全体的に口が悪い日本語版サムス

 

直情的というか…全体的に言動が荒い。読んでいて笑いが込み上げて来る。昔の特撮ヒーロー感。

 

試しに比較してみると…ジョークを挟む余裕がある英語版サムスと比べて、日本語版サムスは直球的言い回しが多い。切羽詰まってて余裕が無い印象も受ける。

 

左:英語版 右:日本語版

 

これは自分の憶測に過ぎないが、もしかしたら…日本語版ではサムスの "人間らしさ" を強調しようとしたのではないだろうか?

 

銀河最強と名高いアウトローの賞金稼ぎ。パワードスーツ姿の勇猛果敢な戦士。しかして、その正体は心優しき地球人女性。悲惨な過去を背負いながらも、平和のため人知れず戦い続ける。

 

こうした意外性・人間臭さを文章で表現した結果が、日本語版の台詞なのかもしれない。言動が荒いのは、使命を全うせんとする必死さの表れなのかも…そう分析した。

 

必死に戦っている感じが伝わる

 

一方、英語版サムスは "クールな一匹狼" 的側面をプッシュしている印象。

 

小粋な台詞を吐きながら、自らの手で敵を討ち滅ぼす。誰の助けも借りたくない。そんな孤高の女戦士。ファンが思い描く理想的なサムス像と言える。

 

では、実際どれほど違うのか?

 

日米サムスの言動の違い

例えば、敵との戦闘で窮地に陥ったサムスが、ヒューストンの助けを借りて逆転勝利した直後のシーン。ヒューストンに礼を言うサムスの台詞が日本語/英語で微妙に違う。

 

まず、日本語版の台詞がこちら。

 

ヒューストン さっきは…ありがとう(左下)

 

日本語版サムスさんの台詞は、シンプルな感謝の言葉とても素直。

 

この話の冒頭、サムスさんはヒューストンを軽蔑する旨の発言をしている。銀河の平和のことなど微塵も考えず、賞金のおこぼれを狙ってサムスに付き纏っているだけだろ!と酷評したりもしていた。

 

第2話冒頭でヒューストンを軽蔑していたサムス

 

この「ありがとう」という言葉には、蔑んだ非礼を詫びるような意味合いも含まれている…気がした。

 

アンタ思ったより悪いヤツじゃないのね。そんなニュアンス。歩み寄ろうとする優しさが感じられる。

 

一方、英語版だとこんな台詞になっている。

 

Thanks, but I can take care of myself!(左下)

 

一応、助けてくれたヒューストンに感謝はしている。しかし、完全に気を許している訳ではなさげ。お前が来なくても私だけで何とかできた!甘く見んな!…そんなニュアンスが滲み出ている。

 

英語版のサムスさんはクールで素敵なのだが…こんな感じで結構キツめの台詞も多く、少々印象が悪い。

 

コミック版『スパメト』のサムスさんは、敵の罠にかかって重傷を負い戦闘不能 → 鳥人族の星に運ばれて治療する…という失態を犯している。英語版のクールサムスの場合、この失態が異様に目立つのだ。格好良いこと言ってる割にダメダメというか。

 

ド派手に肩を負傷するサムスさん

 

その点、日本語版サムスはだいぶ親しみやすい。件の失態についても「まぁミスもするよね!人間だし!」と許容できてしまう。

 

パワードスーツを着た戦士が実は女性で、その人が必死に戦っている感。所謂 "ギャップ萌え" である。

 

日本語版特有の "ギャップ萌え" の到達点。それは重傷を負ったサムスが治療のため鳥人族の星に行き、育ての親「オールドバード」と再会するシーンである。

 

「ひどいケガじゃないか!どうしたんだ、リトルサムス?」

おじいちゃん また来たよ」

 

え…ちょっと待って。

 

リトルサムス??? おじいちゃん???????

 

可愛すぎかよッ!!!!!

 

宇宙の悪党どもから恐れられる凄腕の賞金稼ぎ、サムス・アラン。当たり前だが、そんな彼女にも家族というべき存在がいる。

 

鳥人族の面々からは「リトルサムス」の呼び名で溺愛され、サムスも「おじいちゃん」と慕いなついている。在りし日のゼーベスの日常。そんな背景が見え隠れするシーンなのだ。可愛い…可愛すぎる…*3

 

そんな感じで…日本語版サムスは全体的に愛おしい

 

日本語版サムスの台詞は愛おしい

 

敵やヒューストンに対しては当たりが強いが、オールドバードなど親しい人物とは割と素直に会話してるのが良き。大型犬のような可愛らしさ。個人的にサムスさんの台詞に関しては日本語版の方が好き。英語版も嫌いじゃないけどね。

 

ただ…日本語版にも褒められない汚点がある。英語版と比べてメッチャ改悪されているシーンがあるのだ。

 

問題のシーンは、最終話ラスト。マザーブレインを倒し、爆破崩壊するゼーベスから脱出する一同。ベビーの死を嘆き涙を流すサムスと、そんな彼女を慰めようとするヒューストンの会話である。

 

「ベビー…」

「サムス…気持ちはわかるが あきらめろ…縁がなかったんだ」

 

それよりいっそ本当の子供をつくっちゃどうだ 地球人と鳥人の血を引いた子を…」

 

…俺と…

 

…は?…何言ってんだコイツ???

 

正直ドン引きである。愛するベビーが死んで傷心しているのに、代わりに俺と子供をこさえようや!とか。んなこと言う場面じゃないだろ!頭沸いてるんじゃないか!?

 

何というか…サムスが女性であることを強調しすぎてて生理的に無理。ちょっと "ギャップ萌え" を狙いすぎじゃない?日本語版唯一の汚点かもしれない。

 

というか…サムスの「!」という台詞にも問題がある

 

ヒューストンの発言に呆れてものが言えないのか、はたまた満更でもないのか…解釈の余地がありすぎる。日本語版の担当者は、わざとこんな表現にしたのだろうか?

 

一方、英語版の台詞はだいぶマシになっている。いざ比較。

 

「The Last Metroid…」

「Sorry about the hatchling, Samus… I know it thought you were its Mother… It was Fate…」

 

「Now, How about you and I work together and make the rest of the galaxy safe for everyone?」

 

What do you say…partner?

In your dreams!

 

うん。こっちの方が自然な気がする。英語力ゼロの自分でもそう感じる。

 

パートナーになる?そんなのありえないね!口説きに来る野郎どもを毅然とした態度でキッパリ跳ねのける。こっちの方がサムスらしいと思う。解釈一致。

 

(というか、このシーン自体いる?いらないのでは?って感想が出てくる。完全に蛇足やろ…)

 

気になる点もあるが十分楽しめる

 

…とまぁ賛否分かれそうなシーンもあったりするが、

 

総合的に見てコミック版『スーパーメトロイド』は面白い

 

それまで割とテキトーだった『メトロイド』の世界観を改めて整理。サムスの過去や鳥人族盛衰の話など、今なお続くシリーズの根幹設定を初めて確立した本作は、史料的価値が非常に高い。

 

日本語/英語版で微妙に表現が違うので、見比べてみることで面白さ倍増。多少ツッコみどころはあるが何だかんだ楽しめる。そんな愛すべき漫画だと思う。

 

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日本語版オリジナルの設定コラム集

日本語版『スパメト』には、もう1つオリジナル要素がある。漫画冊子の最後に設定コラム集が掲載されているのだ。英語版には無い。

 

日本語版オリジナルの設定コラム集

 

このコラムには、ゲーム本編では語られなかった『スーパーメトロイド』裏設定がギッシリ詰め込まれている。あまりネットで出回っていない情報の宝庫。設定オタク的には垂涎もの。

 

※なお、これらの設定は『スーパーメトロイド』発売当時のものであり、その全てが現行の『メトロイド』シリーズに引き継がれているとは限らない。話半分に聞いておくのが丁度良い。

 

今回はこの設定コラムの中で特に面白いと思った、アイテム関連の設定についてピックアップしたい。まず、スーツに関する設定である。

 

まずサムスが与えられたのはバリアスーツだった。外皮の強靭な鳥人は、目や四肢の末端を保護するだけで高熱帯でも活動できるが、人類の皮膚ではクレテリアより地中深くは進めない。しかしトレーニングの成果は予測をはるかに上まわり、彼女はまもなく並はずれた運動能力を発揮するようになる。

 

そしてしばしばノルフェア深部などに足を運ぶようになったため、さらに強力なグラビティスーツが用意された。これにより、マリーディアの重水、ノルフェアの強酸水の中でも行動可能になった。

 

引用:ゲーム・オン! 1994年6月号 スーパーメトロイド特集 THE LEGACY OF ANCIENT CIVILIZATION

 

驚いたのが、鳥人族が生身で高熱環境を生き延びられること。目や四肢末端だけ守れば大丈夫らしい。あの人達そんなに頑丈だったのか…

 

だが、人間であるサムスはそうはいかない*4。彼女がゼーベスの高熱地帯でも安全に活動できるよう、鳥人族は「バリアスーツ」「グラビティスーツ」を開発して授けたらしい。

 

高熱環境でも活動できるバリアスーツ

 

面白いのが「しばしば足を運ぶようになったから」という表現。子供がよく虫捕りに行くので、虫捕り網を買ってあげた…的な。そんな軽いノリで与えて良い装備なの?

 

続いてビーム関連の設定。これは公式攻略本『スーパーメトロイド サムス・アランの2時間59分』でも言及されているので、知っている人は多いと思う。

 

サムスの使用する武器は、大きく分けて3種類ある。敵攻撃用のビーム兵器とミサイル兵器、そして爆弾兵器だ。

 

中でも、最も特徴的なものはアイスビームで、多くの敵を一定時間凍りつかせることができる。これは鳥人族の進んだ医療技術が応用されたものだが、反面、時空間を歪める危険性があるため、使用には充分な配慮が必要とされる。

 

また、プラズマビームは原子レベルで物質を破壊するため、乱用すれば微妙なバランスで成り立っているゼーベス星の生態系を崩壊させることになりかねない。

 

引用:ゲーム・オン! 1994年6月号 スーパーメトロイド特集 THE LEGACY OF ANCIENT CIVILIZATION

 

アイスビーム」は、鳥人族の高度な医療技術を応用した兵器らしい。しかも、時空間を歪める危険性があるという。どういうこと?

 

スパメト設定によると、アイスビームは物体のエントロピーを停止させ、別の時空間に切り離す。その副作用により敵が凍って見える…という原理らしいのだ。

 

別次元に切り離して固定する!

 

『メトロイドシリーズ』では敵にアイスビームを撃つと凍結して動かなくなり、足場として利用可能になる。空中にいる敵を凍らせても落下せず、その場でピタッと止まるのは、通常の時空間から切り離されているからなんですね*5

 

あと「プラズマビーム」の解説がヤバい。

 

原子レベルで物質を破壊とか怖すぎる。

 

公式攻略本によれば、プラズマビームが命中すると一瞬で核融合反応が発生・爆縮するらしい。つまり相手は死ぬ。ヤバすぎ。そんな危険な武器とも知らずバンバン撃ちまくっていたのですが…

 

『ドレッド』でも大活躍のプラズマビーム

 

メタ要素の補完も面白い。『メトロイドシリーズ』では往々にして、サムスの強化アイテムが都合良くステージ各地に設置されているが…実はこれには理由がある。

 

数々のアイテムが、あらかじめ鳥人族によって用意されたものであることは前回報告した。来るべき決戦に備え、鳥人族がサムスの行動をシミュレーションし、パワースーツの運動機能を損ねることなく、スムーズなパワーアップが成せるように配備したものだ。では何故これほどまでに複雑で、発見されにくい位置にあるのか?

 

これらのアイテム配置は大別して2種類。鳥人族がセットした状態でそのまま時間を経たものと、なんらかの外的要因によって移動してしまったり、隠されてしまったものがある。もちろん前者にしても外敵に破壊されないように、サムス以外には発見されにくい工夫が施されている。一方、後者はまったく偶発的に位置が変化しているため、発見をたいへん困難なものにしている。

 

引用:ゲーム・オン! 1994年7月号 スーパーメトロイド特集 BLIND TOPOGRAPHER

 

そう。あのご都合主義的に配置されている強化アイテムは…

 

鳥人族がサムスの来訪を予期して設置していたのだ。

 

サムスの来訪を予期してアイテムを遺している!

 

『メトロイドシリーズ』では、鳥人族の棲んでいた惑星・遺跡を探索する場面が多い。サムスが訪れた時には既に鳥人族は全滅しており、生存者はゼロ。無残に横たえた廃墟だけが遺されている。

 

だが、鳥人族はいずれ同胞 (=サムス) が来ることを予期していて、救援物資を残してくれていたのだ。パイレーツなどの敵組織に発見されないよう、サムスの行動をシミュレートして、彼女だけが確実に探し当てられる場所に巧妙に隠したのである*6*7*8

 

生き残った鳥人族はゼーベス星を捨て、辺境の星へと移住したが、彼らがもっとも恐れていたのは残してきた数々のサポートアイテムが、マザーブレインによって排除されてしまうことだった。

しかし、遺跡の各所に巧妙にカムフラージュされたアイテムは、ついにサムス以外の者に発見されることはなかった

 

もちろん、サムスに関するさまざまなデータをマザーブレインも持っていたが、彼女の運動能力はしばしばマザーブレインのシミュレーションを上回り、各エリアに配置したエイリアン達を駆逐してしまったのだ。

鳥人族の頭脳として機能していたマザーブレインをしても、予測できなかったサムス・アランの能力。それは、まさに宇宙の奇跡と呼ばざるを得ない

 

引用:ゲーム・オン! 1994年8月号 スーパーメトロイド特集 MISSING CONTROL

 

設定コラム集の最後には「ダン・オーセン (Dan Owsen)」という人物が編集後記的コメントを残している。『モータルコンバット』が流行ってる、和製RPGはあまりウケない…などなど。90年代アメリカのゲーム事情を赤裸々に語っている。

 

ダン・オーセンの編集後記的コメント

 

このダン・オーセンさんだが、実は当時のNintendo of America社員。任天堂ゲームのローカライズ担当をされていて『メトロイドⅡ』販売とかにも関与している。

 

それから…『スーパーメトロイド』冒頭の英語ナレーションを担当した人だったりする。The last Metroid is in captivity…

 

―― エンディングのクレジットに、外国人の名前がでてきますよね。ダン・オーセンとか。

 

山本*9

ああ!これは秘密でもなんでもないんですけど、彼はNOA (ニンテンドー・オブ・アメリカ) の人間なんですよ。日本に来ることが多くて、そのときにしゃべってもらったんです。オープニングの「しゃべり」がありますよね。あの声をやってくれた人なんです

 

―― じゃあ、あれは声優じゃなくて?

山本:

そう。ただのサラリーマン。(笑)

 

引用:スーパーメトロイド サムス・アランの2時間59分 (P.95)

 

う〜ん。この手のゲーム設定集・開発者インタビューは何回読んでも飽きが来ない。文章を読んでいるだけで無限に妄想が広がる。ゲーム本編を遊ぶのとはまた違った楽しみ方ができるのだ。

 

何が言いたいのかと言うと…『メトロイド』設定資料集はマジで需要があると思う

 

初代~ドレッドまでの没案含む全設定資料集。『メトロイド』版ハイラルヒストリア。絶対欲しい人は多いハズ。任天堂には是非前向きにご検討いただきたい。お待ちしております🙇‍♂️

 

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まとめ

 

以上、日米同時連載されていた幻のコミック版『スーパーメトロイド』紹介記事でした。

 

コミック版『スパメト』は単行本・電子書籍化されてない

 

もし読んでみたい場合は…当時掲載されていた雑誌を漁る必要がある。ネットオークションで雑誌を探すか、国会図書館に出向いて蔵書を閲覧しよう。

 

あと、同じく『メトロイドシリーズ』の漫画作品で、多くのファンに賞賛されている『メトロイド サムス&ジョイ』という傑作漫画がある。詳細は過去記事を。

 

www.wata-ridley.com

 

こちらはコミック版『スパメト』とは違い、電子書籍版が絶賛配信中。良心的価格で購入できる。面白いので未見の人は是非。格好良いサムスさんの雄姿が拝めるぞ!

 

*1:昔の『Nintendo Power』は定期購読式で、新聞配達の要領で毎月各ご家庭に送られていた…らしい。正確な情報が見当たらなかったので脚注で補足。

*2:ちなみに、コミック版『スパメト』ではサムスとリドリーは戦わない。超強化され大暴れするサムスさんを目の当たりにして、チキったリドリーは惑星ゼーベスから脱走するのだ。まさかのリドリー生存ルートですよ。

*3:ちなみに英語版では、オールドバードはサムスのことを「Samus-san」と呼んでいる。ドーモ、サムス=サン。

*4:後発の漫画版『メトロイド』では、人間はゼーベスの過酷な環境下では生きられない!と明言されている。サムスは鳥人族のDNAを受け継いだことで、そんな過酷な環境で生きられるようになったのだ。

*5:『アザーエム』だけは例外。アイスビームで空中の敵を凍らせるとボトボト落下する。あと『プライム』のアイスビームも微妙に設定が違う。空中の敵をその場で凍らせられる点は同じだが、時空間を歪める云々の設定は無い。

*6:『メトロイドプライム』では、この設定がさらに拡張解釈されている。自然と調和し続けた結果、チョウゾ (鳥人族) は予知能力を獲得。いずれサムスが惑星ターロンⅣを訪れることを予期して、強化アイテムやアーティファクトを隠していたのだ。彼らの予期した通り、サムスは見事に災厄の根源 (=メトロイドプライム) の撃破に成功する。

*7:『ドレッド』では、クワイエットローブがアイテムを隠してくれていた…と考えるのが自然だろうか。あの頭脳明晰なレイヴンビークがそれをみすみす見逃し、サムスのパワーアップを許した理由は、ゲームを最後まで遊んだ人なら理解できるだろう。

*8:鳥人族が関与していない惑星・施設を探索する作品もあるが、こうしたケースでも強化アイテムに関する設定はちゃんとしている。『プライム2』『ハンターズ』等では、別種族 (ルミナス、アレンビック族など) が遺したアイテムを活用する。B.S.Lを探索する『フュージョン』では、コア-Xを倒して奪われた能力を取り戻したり、銀河連邦から送られきたデータを使って能力強化を図る。ボトルシップを探索する『アザーエム』では、フル装備のサムスが自らの制限を課して、段階的に能力を解禁していく方式が取られている。

*9:山本 = 山本健誌さん。多くの『メトロイドシリーズ』楽曲を手掛けられている。