わたブログ WataRidley's Blog

コミュ障の鳥類が贈る雑記ブログ。

傑作漫画『メトロイド サムス&ジョイ』を紹介したい

スポンサーリンク

f:id:Wata_Ridley:20191113231606p:plain

 

自分が愛してやまない『メトロイド』シリーズ。

 

近未来の宇宙を舞台に凄腕の賞金稼ぎ「サムス・アラン」が活躍するSFアクションゲームだ。任天堂が世界に誇る人気IPの1つで、昨年10月には新作『メトロイド ドレッド』も発売された。

 

※歴代『メトロイド』シリーズについては、別記事で紹介している。メトロイドはいいぞ…(宣伝)

 

www.wata-ridley.com

 

任天堂IPと言えば…ゲームだけに留まらず、低年齢層向け漫画雑誌を中心に数多くのコミカライズ作品を発行している点でも有名である。

 

幼少期に『スーパーマリオくん』を読んで爆笑した人、穴久保版『ポケットモンスター』のギエピー!を真似して遊んだ人、姫川版『ゼルダの伝説』シリーズの繊細な作画・ストーリーに魅せられた人は多いだろう。

 

f:id:Wata_Ridley:20210428072222p:plain

画像引用:小学館コミック - 任天堂

 

"娯楽を通じて人々を笑顔にする" 企業理念の下、任天堂は自社IPを使った独自の漫画作品を売り出し、少年少女たちを虜にしてきたのだ。ファンに長年愛されている理由の1つと言える。

 

そして…『ゼルダ』『ポケモン』には到底及ばない量だが、同じ任天堂製ゲーム『メトロイド』も、良質なコミカライズ作品に恵まれている。

 

中でもズバ抜けて有名なのが『メトロイド サムス&ジョイ』という漫画。

 

 

2000年代初頭、少年雑誌「コミックボンボン」で連載されていた任天堂監修の漫画作品だ。作者は漫画版『ロックマン8』などを手掛けた出月こーじ先生

 

この『サムス&ジョイ』だが…ファンの間でメチャクチャ評判が良く、連載終了から20年近く経過した今なお多くの人々に愛されている。名だたる任天堂コミカライズ作品にヒケを取らない屈指の傑作漫画なのだ。

 

今回はそんな魅力溢れる『サムジョイ』について、自分なりの解釈を交えた紹介記事を書き綴りたい。

 

 

出月こーじ先生の作風について

『サムス&ジョイ』の解説に入る前に…まずはその作者、出月こーじ先生の作風について触れておきたい。

 

漫画版『ロックマン8』『レイズマン・ゼロ』など、出月先生の作品をいくつかを読み漁ったところ…明確なテーマを据えた上で手堅く綿密なストーリーを描き切る!そんな作風をお持ちだと感じた。

 

キャラクター全員に役割が与えられ、連載漫画で陥りがちな行き当たりばったりの展開にはならず、堅実に物語が進行していく。緻密な計画性と、静かで熱いハートが感じられるスタイルだ。

 

出月先生の作風が滲み出ている "好例" と言うべき漫画が『ロックマン&フォルテ』だ。今回は個人的に面白い!と感じた第6話を引用し、その仔細を語りたい。

 

 

『ロクフォル』は、同名ゲームのコミカライズ作品。平和を愛する正義のロボット「ロックマン」と、好戦的な悪(?) のロボット「フォルテ」…敵対関係にある2人がタッグを組み強敵に立ち向かう!という熱いストーリーが展開される。

 

f:id:Wata_Ridley:20210501141402j:plain

画像引用:月は出ているか


主人公「ロックマン」は、絵に描いたような優等生。豊富な武装と巧みな戦術で悪を討ち、か弱き者に手を差し伸べてきた。超がつくほど真面目な "良い子" で正統派主人公!といった風格。

 

もう1人の主人公「フォルテ」は対極。自分こそ最強と信じて疑わない俺様キャラで、気に入らねぇ連中を叩き潰す。ロックマンに一目置いている節があり、ちょっかいをかけたがる。そんな愛すべき "悪ガキ" 的側面もある。

 

『ロクフォル』第6話では、そんな凸凹コンビの前に…飛行特化型ロボ「テングマン」が立ちはだかる。

 

プライドの高い実力者「テングマン」

 

自らを "空に認められた者" などと称し、他者を蔑み、仲間すらも無下にあしらうイケ好かない野郎だが…その実力は確かだ。

 

超スピードで空中を飛び回る「飛行能力」と、テングブレードから放たれる「真空波 (カマイタチ)がテングマンの主力武器。

 

目にも止まらぬ速さで攻撃をかわし、強烈な真空波で切り刻む!作中屈指の強敵で、卑劣なヒット&アウェイ戦法にロックマン達も苦戦を強いられる。

 

蝶のように舞い!蜂のように刺す!


だが、そんな傲慢なテングマンを、自分が最強と信じて疑わないフォルテが気に入るハズもなかった。

 

両者は罵声を投げ合い熾烈な空中戦を繰り広げ…いつしか戦いは飛行スピード対決に発展。空高くに向かってグングン急上昇する2人。ロックマンそっちのけ!

 

しかし…飛行性能ではテングマンの方が圧倒的優位。最大出力で発進したフォルテだったが、瞬く間に追いつかれてしまった!

 

遊びは終わりだ!ほくそ笑んだテングマンがトドメの一撃を繰り出す!危ないッ!!

 

何故だ!真空波が出ないッ⁉

 

しかし…何も起こらない。いくらテングブレードを振るっても真空波が出ないのだ。一体どうしたことか。

 

そう。2人は成層圏をゆうに飛び越え…空気の薄い宇宙空間に到達していたのだ。元より真空状態の宇宙では、真空波が伝わらない!

 

意外ッ!それは戦略勝ち!

 

全てはフォルテの計画通り。テングマンにスピード勝負を挑んだのも、地の利を取って武器を封じることが目的だったのだ。

 

そして…勝ち誇ったフォルテはこう言い放つ!

 

「俺を見ろ!俺こそが…"宇宙 (そら) に認められた者" だぜ!!」

 

 

お…面白い!! 単行本を読んでいた自分は思わず溜息が漏れた。

 

理詰めの作戦で相手を封殺し、上から目線で自信満々にぶちのめす!フォルテのズル賢さ&俺様キャラっぷりを、たった数ページで見事に表現していると感じた。

 

漫画の話に戻ろう。怒涛の反撃でテングマンに致命傷を負わせ、一気に優勢になったフォルテ。しかし…あと一歩という場面でエネルギーが底を尽き戦闘不能にダメじゃん!

 

不利な状況でどう立ち向かうのか?

あとはロックマンの健闘に期待したいが…テングマンの飛行能力は健在。フォルテ戦で武器を失ったものの、攻撃を避ける程度なら造作もない。

 

そして、追い討ちをかけるように崩れゆく足場!下は奈落の底。落ちれば一巻の終わりである。果たして…ロックマンはテングマンを倒せるのか!?

 

ネタバレになるが結末を言おう。ロックマンは…仲間とのチームワークで勝利を掴んだのだった。テングマンが格下と蔑んでいた雑魚ロボ「メットール」との共闘である。

 

突進!…と見せかけてメットール!


まずロックマンがジェット噴射で突撃。単なる猪突猛進と思い込み、鼻で笑いつつ回避するテングマン。

 

だが…この突撃は陽動に過ぎない。油断したテングマンに後続のメットールが飛びついた!

 

メットールは決死の覚悟でしがみつき、ひしと掴んで離さない。プライドの高いテングマンは "格下" の抵抗に激しい怒りを覚え、我を忘れてしまう。

 

相手の動きが止まった!この好機をロックマンは逃さなかった!

 

 

「手下の者をゴミのようにしか扱えないお前に、人の上に立つ資格はない!!」

 

こう叫び、特大チャージショットでテングマンを撃破。見事に勝利を掴んだのだった。博愛主義で仲間を大切にする我らがヒーロー、ロックマンならではの決着と言えよう。

 

仲間と掴んだ勝利!

 

…こんな感じで『ロクフォル』は、対照的なダブル主人公を活躍させ、互いの個性を引き立てる秀逸な作劇がなされている。少年漫画と侮るなかれ。話のバリエーションに富んでいて読者を飽きさせない。

 

こうした緻密な作劇は、漫画を描く前にプロットを組み立て、計画的に原稿作業を進めなければ達成しえない。出月先生や編集者、アシスタント陣の優れた手腕が伺える。

 

続きが気になる方は是非、単行本 or 電子書籍を買って読んで欲しい。前日譚の『ロックマン8』と一緒に読むのがオススメです(宣伝)

 

 

 

スポンサーリンク
 

少年の成長物語『サムス&ジョイ』

何だか『ロクフォル』感想文みたいになってしまったが…ここからが本題。傑作漫画『サムス&ジョイ』について紹介しよう

 

堅実な作劇で読者を魅了する出月こーじ先生。『ロクフォル』執筆終了後、彼に課された次なるミッションは…『メトロイド』の少年漫画を描くことだった。

 

f:id:Wata_Ridley:20191113231606p:plain

『メトロイド サムス&ジョイ』全3巻

 

2000年代初頭、当時のメトロイド界隈は『フュージョン』『プライム』の2大タイトルが同時発売されるなど、凄まじい盛況を見せていた。『サムス&ジョイ』も、そんなビッグウェーブに乗じて始動した連載企画だったのだ。

 

画像引用:METROID OFFICIAL SITE

 

しかし…である。『メトロイド』の少年漫画を描くなんて、正気の沙汰ではない。

 

『メトロイド』は、ハードな世界観に定評あるSFアクションゲーム。年齢層高めのユーザーを意識した内容で明らかに大衆ウケする作品ではない。それを子供向けの漫画雑誌で描け!というのだ。…って想像できん!常軌を逸している!!

 

『メトロイド』の少年漫画は描きづらい!!

 

第一、主人公「サムス・アラン」は大人の女性で、アウトローの賞金稼ぎ。誰の力も借りず、たった1人で任務を遂行する "寡黙なヒーロー" である。

 

格好良いことは間違いないが…少年漫画の主人公を張るには、あまりに孤高でクール過ぎる。口数が少なく、子供の読者からすれば遠い存在というか…ロックマンと比べると親近感が湧きづらい。むしろ敵側にいそう。

 

ついでに言うと…原作『メトロイド』にはサムスの仲間が全然いないので、人間ドラマを描きづらい。リアルSFの世界観も相まって、作劇が困難になることが容易に想像できる。

 

こうした無理難題に対して、出月こーじ先生はどんな解決策を編み出したのか?

 

f:id:Wata_Ridley:20210321133342p:plain

『メトロイド』をダブル主人公で少年漫画化!

 

漫画のタイトルから推察できるだろう。原作主人公「サムス」と、もう1人の主人公「ジョイ」を活躍させる "ダブル主人公制"を導入したのだ。前述の『ロクフォル』と似ているが…その性質は微妙に違う。

 

本作の主人公「ジョイ」は、原作ゲーム未登場の完全オリジナルキャラ。ハードな世界観の『メトロイド』に不相応な "田舎暮らしの少年" である。

 

f:id:Wata_Ridley:20210321135250p:plain

主人公「ジョイ」はやんちゃな少年だ

 

版権モノの漫画で何の脈絡もなくオリキャラを投入するなんて、超リスキーな行為だ。下手すれば原作の良さを殺しかねない。二次創作でも忌み嫌われる要素である。

 

実際、任天堂の監修担当者は『サムス&ジョイ』企画案に強い抵抗を示したらしい。

 

ハードな世界観の『メトロイド』に原作未登場のオリキャラ (しかも子供) を出すなんてマズイ!世界観を壊す!という判断だろう。流石は任天堂。納得できる話ではある。

 

だが安心されたし。『サムス&ジョイ』は世界観を崩すどころか…原作の魅力を最大限引き出した傑作漫画となっている。


まず重要なのが、原作主人公「サムス」が完全無欠のスーパーヒーローとして描写されていること。

 

銀河最強の賞金稼ぎで常に冷静沈着。何事にも動じず、どんな困難なミッションも成し遂げる。原作主人公の "強さ" を徹底リスペクトする姿勢は、漫画の最後までブレることがない

 

原作主人公「サムス」がメチャ強い!

 

『サムジョイ』第1話では、ジョイ達が暮らす辺境の惑星をスペースパイレーツが襲撃。村の住民全員が人質にされ、絶体絶命の大ピンチに。

 

だが…颯爽と駆けつけたサムスが瞬く間に敵軍を殲滅。見返りを求めることなく、無報酬で住民を救出するのだ。これが強いのなんの!

 

敵の放った銃弾を瞬時に掴み取り、カウンター攻撃で瞬殺!巨大兵器をスーパーミサイルで粉砕!パワーボムで群がる敵を一網打尽!!…凄まじい無双っぷりである。

 

f:id:Wata_Ridley:20210321135709p:plain

強い!絶対に強い!!

 

本作では、そんな百戦錬磨のサムスを "師匠的ポジション" に据えた上で、もう1人の主人公「ジョイ」の成長物語が描かれる。

 

ジョイは一瞬で海賊を蹴散らしたサムスに惚れ込み、弟子入りを懇願。格闘家だった亡き父親と、サムスの背中が重なって見えたらしい。

 

父親のような強い男になりたい!サムスはその秘訣を教えてくれる!…ジョイを突き動かしていたのは、そんな純粋無垢な "強さ" への憧れだったのだ。

 

サムスのように強くなりたい!

 

けれど…ジョイは至って普通の少年。亡き父が遺したグラブ型装備「フィールドナックル」を使いこなし、宇宙の悪党共を相手に健闘するも…戦闘経験は浅い。最初は軽はずみな言動、迷い、精神の未熟さも目立つ

 

特に顕著なのが『サムジョイ』第2巻。

 

行方不明になった母親を捜索するため、ジョイ達は荒廃した氷の惑星「ディグレイド」に降り立つのだが…何も知らない彼らに、血に飢えた凶暴な原生生物が襲いかかる!

 

仲間達が次々と襲われ死傷。自らも危険に晒される異常事態。ジョイは無意識のうちに怖気付き、戦意喪失してしまう

 

敵の猛攻に怖気づいてしまうジョイ

 

しかし…数々の死線を潜り抜けてきたサムスは動じない。僅かな生存者を守り抜くため、決死の覚悟で戦いに挑む!

 

「恐れるのは恥じゃない。戦いは私だって怖い」

 

「怖くて震えながら戦ってきたが、大切なモノをたくさん失くした…」

 

 

「だからこれ以上大切なモノを失わないため、怖くても私は戦うんだ」

 

「ジョイ、お前はどうするんだ?」

 

 

う〜ん…はぁ~…カッコイイ!!

 

この辺の台詞はゲーム本編や、サムスさんの過去を描いた『漫画版メトロイド』を読んでいるとグッと来るものがある。最愛の人を失おうと、全身傷だらけになっても、それでも彼女は戦い続けるのだ。

 

あと、本作のサムスはジョイに対して自分の感情を曝け出したり、温かい言葉を投げかけ激励したりする。これも『メトロイド』ファンには堪らない。

 

彼女が任務を淡々とこなすだけの冷徹な戦士ではなく…血が通った "人間" であることがビシビシ伝わってくる。ロボっぽい見た目だけど、心を持った人間なんだ!と子供の読者でも理解できるのだ。

 

f:id:Wata_Ridley:20210321135406p:plain

大人の格好良さを体現した「サムス・アラン」

 

出月こーじ先生は「サムス・アラン」というキャラクターを通して、子供の読者に "大人の格好良さ" を伝えたかったそうだ。

 

時に厳しく、時に優しい師匠的存在。心の底から憧れる、本当に格好良い "大人" のヒーロー。少年漫画では描きづらい題材だが、サムスはまさに適役だったのだ。

 

IDZUKI KOUJI :

最初はハードな世界観を持つメトロイドに少年を登場させるオリジナルの物語に任天堂側は強い拒否反応を示しました。 ハードな世界観が崩れると考えたのでしょう。

 

ですが、私自身は子供にサムスアランの勇姿を通じて、強い正義と覚悟を持った大人の背中を見せたいと思っていたので私の物語に子供を登場させる事は絶対に外せないと引き下がりませんでした。

 

その為に任天堂のある京都の任天堂本社まで出掛けて担当者や坂本プロデューサーと直接交渉をしました。それでついにメトロイドの世界観に少年を登場させる外伝として『メトロイド サムス&ジョイ』は誕生する事が出来たのです。

 

引用:Interview: Idzuki Kouji (Japanese Translation) | Shinesparkers

 

誰のために、何のために引き金を引くのか?…ジョイはサムスの背中から多くを学び、真の戦士として成長していく。

 

凄腕のベテラン戦士と、一番弟子を称する勇気ある少年。主人公2人の魅力を最大限引き出すことに成功している。

 

ダブル主人公の魅力を最大限引き出している!

 

原作設定使い方も丁寧かつ秀逸だ。漫画の登場人物・背景は『メトロイド』の世界観をベースに組み立てられている。

 

銀河社会の裏で暗躍する武器商人組織「ドミニオン」や、サムスをライバル視するバウンティハンター (賞金稼ぎ) など。少年漫画らしからぬ物騒な敵役がストーリーを熱く盛り上げてくれる。

 

リアリティ溢れる設定・世界観も魅力

 

当時『メトロイド』の世界観設定は説明書とかで軽く触れられる程度で、ゲーム本編でその辺が掘り下げられることは全然無かった。

 

その後『メトロイドプライム』シリーズを中心に、ゲーム本編でも銀河連邦や宇宙海賊、ハンター等の設定が段々と活用され始めるのだが…『サムス&ジョイ』は原作に先駆けて世界観の拡張に寄与していたと言える。

 

f:id:Wata_Ridley:20210321135917p:plain

戦闘シーンも超カッコイイ

 

いかなる困難・不条理にも敢然と立ち向かう、等身大の戦士サムス。

 

ゲーム本編では孤高の主人公であった彼女の活躍を、子供の視点から見て応援したり、何かを感じ取ることができる本作は…まさに『メトロイド』の少年漫画の理想形と言えるだろう。

 

 

スポンサーリンク
 

不遇の完結編『メトロイドEX』

『サムジョイ』を語る上で欠かせないのが、不遇の完結編の存在だ。

 

ボンボン連載当時、本作は途中から『メトロイドEX サムス&ジョイと改題され、宇宙の存亡をかけた最終章に突入している。全12話。

 

『メトロイドEX サムス&ジョイ』扉絵

 

凶悪な宇宙海賊「グリード団」の謀略により、装備を喪失したサムス。奪われた能力を取り戻すべく、グリード達を追って見果てぬ銀河に旅立つ!という筋書きだ。

 

グリード団の幹部は、奪った能力を悪用して星々の支配を企む。サムス達は悪の野望を阻止するため、そして…能力を奪還するために奮闘することになる。

 

サムスの能力が敵に奪われてしまう!

 

この "奪われた能力を取り戻す" 展開が、原作『メトロイド』っぽくて、なかなか良い感じなのだ

 

例えば『EX』第1話では、西部劇風の惑星でミサイル能力を有する幹部と対決。

 

鮮やかに勝利を決めたサムスは、ミサイル&スーパーミサイルを使えるようになる。以降の話で幹部にトドメを刺す時に使ってたり。

 

ミサイル能力を持つ幹部「ザミィル」戦

 

続く第2話ではモーフボール&スクリューアタック、第3話ではアイスビーム能力を奪還。強敵に打ち勝ち、探索範囲を拡大。サムスは本来のコンディションを取り戻していく…!

 

そう。最新作『ドレッド』でも見られた『メトロイド』独自のゲーム性を落とし込み、漫画のストーリーとして見事に成立させているのだ。

 

前作以上に原作要素を活用しまくっているし、段々とサムスが強くなっていく展開は読んでいて楽しい。能力奪還のコマを読むと、頭の中で勝手にアイテム取得BGMが流れてくる!

 

ボスを倒してパワーアップ!

 

それだけではない。『EX』には、少年ジョイの成長物語の結末を描き切る!という重要なテーマも据えられている。

 

前作『サムジョイ』では、精神の未熟さ故に恐怖したり、迷いを断ち切れず拳を振れない場面もあったジョイ。その後、サムスの勇敢な姿に感銘を受け、心身共に鍛え抜かれた真の戦士として成長を遂げるのだ。

 

f:id:Wata_Ridley:20210321135640p:plain

サブタイトル『サムス&ジョイ』に偽り無し!

 

『EX』劇中のジョイは完全に "サムスの頼れる相棒" になっていて、かつて苦悩していた姿が懐かしく感じられるほど。

 

最終回で見られるジョイの背中・去り際の台詞は…『サムジョイ』第1話から追ってきた読者からすると、最高にエモかったりする。

 

ジョイの活躍シーンは胸熱だ

 

他にも『EX』は、少年漫画向けにギャグテイストが強化されてて、ゲームでは見られないサムスさんの意外な側面を垣間見れたり、仮面の下に憂いを秘めた悪役「パワードナイト」の登場でストーリーにグッと厚みが出ている等、見どころが多い。

 

メトロイダーは勿論の事、多くの任天堂ファンに読んで欲しい傑作漫画と言えるだろう。

 

 

しかし…残念なポイントが1つ。マジで残念過ぎる問題点。

 

この『メトロイドEX』…何故か単行本化されていないのだ!!

 

物語の結末を描いた終章で、話数も全12話と、全2巻くらいで単行本化できそうな程良いボリューム。にも関わらず…どういう訳か『EX』は単行本化されなかったのだ*1

 

現状、当時のボンボン本誌を入手するか、国会図書館に行く以外に『EX』を読む術は無い。結果…ファンの間でも知る人が限られる "幻の漫画" と化してしまったのである。

 

このため、前作にあたる『サムジョイ』最終巻 (3巻) では、何だか尻切れトンボな終わり方に。きちんと完結してる作品にも関わらず、打ち切り漫画みたいな雰囲気を醸しているのだ。続きが無い!と思い込んでしまった読者もいたらしい。悲しいなぁ…

 

俺達の戦いはこれからだ!(※ちゃんと次の戦いがあった)

 

漫画の続きが気になった自分は古本屋・ネット通販を探し回り…連載当時のボンボン本誌を血眼でかき集め、何とか『EX』全話を読了できた。切り抜いたページをファイリング・強引に単行本化することで、いつでも読み返せるようにしてある。

 

f:id:Wata_Ridley:20191113231712p:plain

自分が収集した『メトロイドEX』全12話の切り抜き

 

山あり谷あり、笑いあり涙ありの少年漫画らしい冒険譚で、幕引きにも大満足。あまりにも最高過ぎるコミカライズ作品だった。それだけに…書籍化されていないのが惜しまれる

 

スポンサーリンク
 

電子書籍版『サムス&ジョイ』を買おう!

自分もメトロイダーの端くれ。『メトロイドEX』を正式な手順で書籍化して、より多くの人に読んで貰うにはどうしたら良いのか?…色々と考えを巡らせてきた。

 

熟考の末に辿り着いたのが…「復刊ドットコム」の投票を呼び掛けるのがベストではないか?という結論だった。

 

復刊ドットコムは、絶版となった書籍を復刊できる画期的なサービス。一般ユーザーからリクエスト投票を募り、大体100票入ったら交渉が進められ、上手く行けば書籍の再版に至る。

 

www.fukkan.com

 

勿論、実績もある。実は最初に紹介した『ロクフォル』も、一時期は絶版になっていたのだが…復刊ドットコム経由で新装版が発売されている。ファンの熱意が届き、復刊されたのだ。

 

f:id:Wata_Ridley:20210428081141p:plain

復刊された『ロックマン』関連漫画

 

なるほど。復刊ドットコム使えば…念願の『EX』書籍化も夢ではない!

 

そう考えた自分は数年前から、Twitterで積極的に『メトロイドEX』の復刊投票を呼びかけ、あらゆる手段で票を伸ばそうと画策してきた。我々にできる努力はコレしかない!…そういう判断だった。

 

 

ただ…復刊ドットコム経由での書籍化は問題も孕んでいる。仮に復刊された場合、単行本の値段が割高となってしまうのだ。

 

BONBONさんのライブ配信動画で、特別ゲストとして招かれた出月こーじ先生が、次のようにコメントされている。

 

出月先生:

けど正直な話をさせてもらうと…現状 一番『EX』が世に出る可能性を秘めているのは講談社からなんですよ。

 

というのは…任天堂・講談社の物なんですよ。『メトロイド サムス&ジョイ』は。

それに…例えば第三者のA社、B社といった他の会社が絡んでくると…当然ドンドンと雪だるま式に単価が上がっていくんですよね。安くは売れなくなるんですよ。

 

安く売れなくなるということは、買う側の人たちにとっても負担になるし…言ってみれば任天堂さんの本意でもないんです。

 

抜粋:BONラジオ(特別ゲストあり!)メトロイドについて語る (1:17:18~)

 

先生のご指摘通り、復刊ドットコム経由で再販された書籍は、元と比べて値段が高い。オリジナルの出版社・版権元に加え、復刊ドットコムが関与した分のマージンも重なってくるため、若干割高になってしまうのだ。

 

例えば、復刊ドットコム経由で発売された『ロクフォル』は定価2,530円。オリジナルの単行本が約500円×2巻 なのを考慮すると、確かに割高である。諸々の特典を含めて…の値段ではあるが。

 

画像引用:『新装版 ロックマン&フォルテ』 販売ページ

 

値段が高くなるという事実に、自分も気づいてなかった訳ではない。でも…仕方ない!それ以外に『EX』書籍化を実現する方法は無いのだから!と盲目的に捉えていた節があった。

 

ただ、最近になって『メトロイドEX』書籍化の足掛かりとなる可能性が高い、もう1つの方法が浮上してきた。

 

それは…電子書籍版『サムス&ジョイ』の売上を伸ばすことである。

 

2022年1月28日、電子書籍版『サムス&ジョイ』全3巻の販売が開始。中古単行本のプレミア化が進む中、適正価格で漫画を読めるようになったのだ。このサプライズ発表を受け、全国のメトロイドファンは歓喜に沸いたものである。

 

 

実は、この電子書籍版『サムジョイ』が発売されたのは…出月こーじ先生の嘆願がキッカケだった

 

出月先生はSNSを通して、多くの読者に『サムジョイ』が愛されていること、単行本が無い『EX』の書籍化を願う声が想像以上に多いという事実を知り、自分にできることは無いか、ずっと模索されていたらしい。

 

そして2021年6月…出月先生は『サムジョイ』単行本と『EX』の原稿を複製した冊子とを同封した嘆願書を、京都の任天堂開発本部宛に送ったのだ。

 

 

出月先生の切実な願いが届いたのだろう。この一連の出来事がキッカケとなり、任天堂・講談社が動いたことで『サムジョイ』は電子書籍化されたのだった。

 

しかし、何故『メトロイドEX』ではなく、既に単行本が出ている『サムジョイ』の電子書籍化なのか?それは…コストの問題があるからだ。

 

単行本化されてない漫画の復刊・電子書籍化には、時間と労力がかかる。『メトロイドEX』にそれを行うだけの価値があるのか?それを見定める必要がある。

 

なので『EX』書籍化に先駆けて、まずはその前日譚である『サムジョイ』を電子書籍化することで、メトロイドの漫画にどれほどの需要・商品価値があるかをチェックしているらしい。

 

つまり…電子書籍版『サムジョイ』の売上が伸びれば、その続編である『EX』の書籍化も現実味を帯びてくるのだ。

 

 

また、講談社は過去に月刊マガジンZという雑誌で、漫画版『メトロイド』を連載していた。サムスの過去に焦点を当てた漫画で、当ブログでも幾度となく紹介している。

 

この漫画版『メトロイド』…公式設定の塊みたいな重要書籍にも関わらず、プレミア化が進み、今では入手が超困難。読みたくても気軽に読めない由々しき状況にある。

 

f:id:Wata_Ridley:20200702145826j:plain

幻の漫画版『メトロイド』

 

だがしかし。電子書籍版『サムジョイ』が爆売れして、メトロイドの漫画に需要があることが証明されれば…「そういえば昔、他にもメトロイドの漫画出してたよね」という話が講談社でなされ、幻の漫画版『メトロイド』が復刊されるかもしれない!そんな可能性も秘めているのだ。

 

そういう事情も全部含めて、日本全国のメトロイドファンにお願いしたい。

 

電子書籍版『メトロイド サムス&ジョイ』を買おう!!

 

スポンサーリンク
 

最後に

以上、不朽の傑作漫画『メトロイド サムス&ジョイ』『EX』の紹介記事でした。

 

この記事を読んで興味を持った人は、是非『サムジョイ』単行本を買って読んでみて欲しい。電子書籍なら定価484円×3冊で買えるぞ!安いな!!!(露骨な宣伝)

 

 

記事本文で述べた通り、電子書籍版『サムジョイ』の売上次第で…続編の『EX』や、他のメトロイド漫画作品が復刊される可能性もある。『サムジョイ』自体もメチャクチャ面白いので、買って損は無い。メトロイド好きは是非!

 

それから、出月こーじ先生による『サムジョイ』『EX』執筆時の回顧録・裏話を、Twitterモーメントにまとめてみた。面白いので『サムジョイ』全巻を読み終わった後、目を通してみて欲しい。

 

twitter.com

 

さらに余談。とあるメトロイドファンの方が出月先生にファンレターを出した話がとても好きなので、合わせて共有しておきたい。心温まる良い話。

 

note.com

 

↑のnote記事を読んでて、自分の気持ちを直接伝える、ポジティブな感想を作者に伝えるのって、やっぱ大事なんだなぁ…と思い知らされた。コミュ障の自分には中々厳しいが…できることを少しずつやっていきたい。

 

*1:『メトロイドEX』が単行本化されなかった理由は、今なお不明である。ただ…講談社が任天堂版権のコミカライズ作品を売り出す権利を途中で失った可能性があり、それが遠因となっているのでは?と自分は推測している。ピクミンの漫画を描こうとしてドタキャンされたという山中あきら先生のツイートなど見る限り、そんな気がしてならない。当時の少年漫画雑誌は (というか今もだが) コロコロコミックが完全に覇権を握っており、任天堂は小学館との結束を最優先としていた。コロコロのポケモン関連のメディア展開が良い例だろう。結果、講談社の入り込む余地は無くなり、撤退を余儀なくされた…そんな感じじゃなかろうか。