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コミュ障の鳥類が贈る雑記ブログ。

良作ファンゲーム『AM2R (Another Metroid 2 Remake)』を振り返る

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自分が愛してやまない『メトロイド』シリーズ。任天堂が手掛ける著名なフランチャイズの1つだが、そのネームバリューに反して、日本国内での人気は鳴りを潜めている…といった印象。人気が無いワケではないのだが。

 

一方、海外ゲーマーの間では『メトロイド』の人気は抜群に高い。好きが高じて世界中の『メトロイド』グッズを収集したり、独学で日本語を勉強して、日本で出版された『メトロイド』関連の書籍を翻訳したりと、行動力のある熱烈なファンが多いのも特徴だ。

 

そして中には『メトロイド』のファンゲームを自主制作する猛者もいる。『メトロイド』のゲーム性・世界観を愛するあまり、自らの理想を追求した究極の二次創作ゲームを作ろう!という発想に至るらしい。

 

数あるファンゲームの中で、特に有名なのが『AM2R (Another Metroid 2 Remake)だろう。本家に負けず劣らずのクオリティで、今なお『メトロイド』ファンの語り草となっている伝説級のファンゲームだ。だが、任天堂からの要請を受けて現在は公開停止となっている

 

今回の記事では、そんな『AM2R』のゲーム内容、制作開始から公開停止に至るまでの経緯などについて、改めて振り返りたいと思う。

 

どういうゲーム?

『AM2R (Another Metroid 2 Remake)は、その名の通り『メトロイドⅡ RETURN OF SAMUS』をファンの解釈でリメイクした自主制作ゲームだ。以下のPV動画を見れば、そのコンセプトを理解できる。

 

 

ゲームボーイで発売された往年の名作『メトロイドⅡ』を、当時の2Dシリーズ最新作『メトロイド ゼロミッション』を基準にリニューアル。モノトーンのゲーム画面が、フルカラーの美麗なグラフィックに刷新され、表現力が大幅にアップ。画面サイズも大きくなり、グッと遊びやすくなっている。

 

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有志ファンによる自主制作『Ⅱ』リメイク!

 

グラフィックのみならず、サムス (主人公) のアクションも大幅に強化『スーパーメトロイド』以降のシステムが踏襲され、スピーディーで爽快な操作感に。さらに「キッククライム」「シャインスパーク」など、原作『Ⅱ』以上に多彩なアクションが使用可能だ。

 

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原作再現度の高いマップ

 

冒険の舞台となる「惑星SR388」のステージ構成は、原作『Ⅱ』をリスペクトしつつ、様々な改変が施されている。サムスのアクション強化に合わせて新ギミックが導入され、『Ⅱ』には無かった完全新規マップなども追加されている。

 

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マップはかなり広い

 

武器・能力を駆使して隠し通路を探し当て、強化アイテムを取得。さらに行動範囲を広げていく…といった、シリーズ恒例の "探索" 重視なゲーム性は健在。ステージ各地に巧妙に隠されたアイテムを見つけ出し、アイテム回収100%クリアを目指そう。

 

マップの随所にはショートカット用の通路などもある。2周目以降のスピードランなど、上級者のプレイングまで想定した堅実なステージ構成となっているのだ。非公式作品とは思えない驚異の作り込み。

 

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演出面でもコダワリを感じる

 

ゲームの要とも言える「メトロイド (ボス)」との戦闘にも注目したい。惑星SR388のメトロイドを各個撃破していくことが、ゲームの達成条件。メトロイドの攻撃パターンが原作『Ⅱ』以上に複雑化していて、歯応えのあるスリリングな戦闘が楽しめる。

 

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メトロイド戦がアツい

 

脱皮を繰り返し、より強大な姿に成長していく "メトロイドの恐怖" は、本作でもしっかり描写されている。フルカラーのグラフィックを最大限に活用していて、原作『Ⅱ』に勝るとも劣らない迫力のある演出に。

 

特にメトロイドの登場演出には力が入っていて「デケデーン!」という心臓に悪い効果音と共に、プレイヤーの不意を突いて襲い掛かってくる。原作『Ⅱ』を初めてプレイした時の焦燥感・恐怖体験を、もう一度味わえるのだ。やだ~コワイ。

 

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うぎゃああ来るなああ

 

『AM2R』は、ファンサービス面でも素晴らしい。原作『Ⅱ』は勿論のこと、歴代『メトロイド』作品をリスペクトした要素がゲームの随所に組み込まれているのだ。制作者が熱烈な『メトロイド』ファン!という話は伊達じゃない。

 

まず、無音で静まり返ったステージが多かった『Ⅱ』とは異なり、『AM2R』では歴代シリーズ作品のBGMが流れる。各ステージの情景に合ったアレンジが施されていて、聴きごたえバツグン。『メトロイドプライム』シリーズの曲まで網羅されていたのには驚いた。

 

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公式作品の世界観・デザインを踏襲

 

『Ⅱ』ではやや単調に感じられた敵キャラ・背景ステージも、シリーズの世界観を考慮してリファインされ、溢れんばかりの個性を獲得。オリジナルのボスなども追加されているが、鳥人族 (チョウゾ) 製の防衛兵器など、"公式っぽい" デザイン・設定となっている。

 

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ファンが喜ぶ小ネタも多い

 

数あるシリーズ作品の中でも、同じ惑星SR388が舞台となる『メトロイド フュージョン』に対するリスペクトは、特に徹底している印象。『フュージョン』に登場したボスが再登場したり、見覚えのある地形が再現されていたり。制作者のセンスの良さを感じる。

 

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「ミッションログ」を読み解くのも楽しい


『メトロイドプライム』のように、ゲームの世界観・設定を解説した「ミッションログ」も用意されている。ゲーム進行に合わせて自動更新され、プレイヤーの任意でログを読むことが可能だ。内容も結構凝っていて、ゲームプレイの合間に読むと楽しい。

 

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コントローラー設定が充実している

 

ゲームの操作性もメチャクチャ快適。キーボード操作は勿論、ゲームパッドにも対応しているため、公式作品と全く同じ感覚でプレイ可能だ。データが軽く、サクサク遊べるのも嬉しい。

 

キーコンフィグなどの設定項目が充実していて、個人の好みに合わせて操作方法をチューニングできるのも好印象。設定次第では『スーパーメトロイド』や『ゼロミッション』の操作感を再現することもできる。

 

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完成度の高い良作ファンゲームだ

 

…こんな感じで『AM2R』は、非公式作品にも関わらず、任天堂公式の『メトロイド』シリーズと遜色ない、ハイクオリティな同人ゲームとなっている。

 

制作者の本家『メトロイド』に対するリスペクト精神がヒシヒシと伝わってくるし、ゲームとしての完成度もメチャクチャ高い。ファンの間で高評価の声が絶えないのも頷ける。

  

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『AM2R』開発の軌跡

良質なファンゲーム『AM2R』は、どのようにして制作されたのか?そして何故、公開停止となってしまったのか?本項では、その詳細な経緯をたどっていきたい。

 

たった1人でゲーム制作を開始!

『AM2R』を制作した人物は、アルゼンチン在住の Milton Guasti (DoctorM64)。『メトロイド』シリーズの熱狂的なファンだった彼は、シリーズ第2作目『メトロイドⅡ RETURN OF SAMUS』の現代風リメイクを実現すべく、行動を起こしたのだ。

 

 

『メトロイドⅡ』は、シリーズでは特に重要な位置づけのタイトル。メトロイドとの死闘や、後の作品で重要な役割を果たす「ベビーメトロイド」との出逢いが描かれている。シリーズの壮大なストーリーを語る上では、絶対に欠かせない。

 

だが『Ⅱ』は、1992年のゲームボーイソフト。発売当時は良質で画期的なゲームだったが……現代の基準で見ると、どうしても古臭く感じられる。そのため、ファンの間で『Ⅱ』のリメイクを求める声は少なくなかった自分もそう思ってたし。

 

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ファンの間でリメイクが期待されていた

 

『Ⅱ』を遊び終わった Guasti氏も、同じような感想を抱いたという。『ゼロミッション』のスピーディで快適な操作性、そして『スーパーメトロイド』のようなクールな世界観・孤独感を盛り込めば、ファンの理想を叶える最高のリメイク作品ができる!と思い立ち、ゲームの自主制作を始めたのだ。

 

Nintendo Gamer :

What is it about Metroid II that inspired you to invest all this time remaking it?


Milton Guasti :

After I finished it for the first time, I thought it would be cool to be able to play it with modern gameplay, Zero Mission style. I figured it would be much more fun to explore the caverns with an on-screen minimap, instead of a printed map on my lap. I imagined the fight with the Omega Metroids being much more epic, having to avoid a screen tall monster instead of the modest beast you fight in the original.

 

引用:Metroid II: Return of Samus... returns! We meet the man out to reboot Samus' Game Boy adventure | Nintendo Gamer

 

驚くべきことに、当時26歳だった Guasti氏は音楽関係の仕事をしていて、ゲーム開発の経験は全く無かった。市販のゲーム制作ツール「Game Maker」を購入後、独学で技術を学びながら『AM2R』の制作をたった1人で続けていたのである。並々ならぬ熱意が、彼を突き動かしていたのだろう。

 

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絶大な支持を得た『AM2R』

2008年初頭、制作開始から2年以上が経過したタイミングで、Guasti氏はブログサイト『Project AM2R』を開設。『AM2R』の制作過程などを、ネット上で公開することにしたのだ。

 

metroid2remake.blogspot.com

 

Guasti氏はブログサイトの開設と並行して、開発途中の『AM2R』プレイ映像をまとめた「Metroid 2 Remake Preview」も公開している。以下の動画を見て欲しい。

 

 

当時まだ子供だった自分は、この映像を観て初めて『AM2R』の存在を知ったのだが…その時の衝撃は今でもよく覚えている。

 

かつての自分は「初代『メトロイド』を遊びやすく刷新した『ゼロミッション』のような、リメイク版『Ⅱ』を遊びたい!」と切望していた。あまりに妄想が行き過ぎて、勝手にパッケージ案を考想していたほど。限界オタク過ぎる…。

 

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当時の自分が描いたリメイク版『Ⅱ』の妄想イラスト

 

前述の『AM2R』プレイ映像を観ると、当時の2D最新作だった『ゼロミッション』のシステムをベースに、『Ⅱ』特有のゲーム性・世界観を忠実に再現しているのが見て取れる。ファンの誰もが思い描いていた、リメイク版『メトロイドⅡ』の理想形を見事にゲーム化していたのだ。

 

この映像のインパクトはやはり大きかったようで、『AM2R』開発プロジェクトはネット上で大きな注目を集め、世界中の『メトロイド』ファンに大絶賛されたのだった。

 

そして、中には「自分も『AM2R』開発に協力したい!」と名乗り出るファンも。ドット絵やプロモアートの作成、ミッションログで使う設定資料の執筆、テキストの外国語翻訳などは、こうした熱狂的な有志ファンによって手掛けられた。

 

 

2008年には『Metroid: Confrontation』という試遊版ソフト、2011年末にはゲームの序盤だけ遊べる体験版ソフトを配信。その後も不定期で体験版をアップデートし、それを遊んだユーザーからのフィードバックを参考に、徐々にゲーム内容の拡充が行われたのであった。

 

ゲーム制作の協力者が増え、当初の予定以上の追加機能を実装しようとした結果、開発プロジェクトは超長期化。このような段階で、企画が頓挫してしまう自主制作プロジェクトは数知れない。

 

…だが『AM2R』は、長い年月をかけながらも着実に開発が進められ、ゲームの完成までこぎ着けたのだ。本当にスゴイと思う。

 

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リリース直後に公開停止!

2016年8月6日、プロジェクト開始から10年以上の年月を経て、ついに『AM2R (v1.0)』がリリースされた。エンディングまで全編プレイ可能な "完成版ソフト" である。

 

※ちなみに、この日は初代『メトロイド』の発売日。つまり…『メトロイド』シリーズ生誕30周年の記念日でもあった。作品愛に溢れた粋な計らいだったのだ。

 

『AM2R』は PC (Windows) 用ゲームとして無料配信され、複数のファイル共有サイトでダウンロードが可能だった。世界中のゲーマーから大きな注目を集め、DLサイトがアクセス過多で一時ダウンするなど、凄まじい盛況っぷりを見せたものである。

 

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『ゼロミッション』以降、2D新作が無かった

 

それもそのハズ。当時は『2Dメトロイド』新作が全く供給されない、ファンにとって長く苦しい時期だったのだ。2004年発売の『ゼロミッション』以降、伝統的な横スクロール型の『メトロイド』は、長らくリリースされていなかったのである*1

 

そんな状況で公開された『AM2R』は、同人作品である点を除けば、まさにファンが待ち望んでいた『2Dメトロイド』新作そのものだった。その魅力に惹きつけられた多くのファンが『AM2R』の完成に期待していたのである。お祭り騒ぎに発展したのも無理はない。

 

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『AM2R』に期待するファンは多かった


しかし、こうした事態は長く続かなかった。『AM2R』を公開してから間もなく、関係者の元に任天堂からのDMCA (デジタルミレニアム著作権法) 警告メッセージが届いたのだ。 

 

任天堂はファンの活動を好意的に捉えつつも、『AM2R』が自社の知的財産を侵害しているとして、ゲームの公開停止を要求したのだった。『メトロイド』は任天堂の著作物。至極 真っ当な理由であろう。

 

公開中止の理由はもちろん、任天堂からの要請だ。Polygonがこの件について問い合わせたところ、任天堂は以下のように返信している。

 

“任天堂の幅広いキャラクター、商品、ブランドは世界中の人々に楽しんでもらっていますし、ファンの情熱には感謝しております。しかし、任天堂が他社IPを尊重しているように、私達も自分達のキャラクターや商標などを守らなければいけません。非公式にIPを使用されることは、私達がIPを守る力、保護する力、そして新作を生み出す力を弱める可能性があります”

 

引用:非公式『メトロイド2』リメイクが公開中止へ。任天堂のIP戦略を悩ませる“熱烈すぎる”ファンメイド | AUTOMATON

 

この要請を受けて、2016年8月9日を以て『AM2R』は公開中止となった。ゲームの配信開始から、わずか3日後の出来事であった。悲しみ。

 

automaton-media.com

 

このときの反響は凄まじいものだった。『AM2R』公開停止を残念がる声が広がり、中には任天堂に対して怒号を飛ばすような過激なファンもいた。前述のとおり、当時のファンは『2Dメトロイド』新作に飢えていたので、相当な鬱憤が溜まっていたのだ。不穏な空気が流れていたと記憶している。

 

この事件を受けて、Guasti氏は開発ブログを更新。10年以上に渡る『AM2R』制作の思い出を振り返りつつ「任天堂の判断は正しかった。彼らを憎まないで欲しい」「抗議のメールを送るくらいなら、Nintendo eShopで公式の『メトロイドⅡ』を買ってくれ!」などと、怒り狂ったファンをなだめるコメントを残しているファンの鑑。

 

As you may know already, AM2R received DMCA notices in all the download hosts, and some parts of this blog. So far, no C&D letter was received.

<中略>

Please, don't hate Nintendo for all of this. It's their legal obligation to protect their IP.
Instead of sending hate mail, get the original M2 from the eShop. Show them that 2D adventure platformers are still a thing people want.

 

引用:The future of AM2R | Project AM2R - Another Metroid 2 Remake

 

…だが実は、任天堂から警告を受けた後も『AM2R』プロジェクト自体は存続していた。ゲームの公開は停止したものの、2016年8月中旬には『AM2R』修正パッチ (v1.1) を作成・配布するなど、こっそりと活動を続けていたのである。

 

リリース直後の正式版 (v1.0) では、アイテム入手後にサムスが消えるなど、ゲーム進行に関わる重大なバグがいくつか確認されていたのだ。Guasti氏は『AM2R』開発者として、そうした問題を解消したかったのだろう

 

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公式作品のアセット流用が問題視されていた

 

また『AM2R』は、歴代『メトロイド』シリーズのアセット (ドット絵など) を流用している点も問題視されていた。所謂「素材ぶっこ抜き」である。コレに関しても、今後のアップデートで自作素材に差し替えるなどして、徐々に修正していく予定だったらしい。

 

つまり、善意100%な理由で開発プロジェクトを続けていたのだが……結果として任天堂の忠告をガン無視していることになり、好ましくない行為ではあった。

 

任天堂もコレを見逃すことはなく、ほどなくして2度目のDMCA警告メールを送信。この要請を受けて、2016年9月2日に『AM2R』プロジェクトは完全に停止したのだった。

 

 

余談だが、同年11月に開催された「The Game Awards 2016」において、ファンメイド部門の受賞候補として『AM2R』が選出されていた。超クオリティの自主制作ゲームを手掛けた、熱意あるファンの姿勢が評価されたのだろう。

 

だが『AM2R』は、選考段階でノミネート対象から除外されてしまった。その理由は今もって不明だが…おそらく「The Game Awards」の審査員に任天堂が含まれていたことが関係していると思われる。詳細は以下の記事を読んで欲しい。

 

www.gamespark.jp

 

任天堂の『AM2R』に対する処置については、ファンの間で様々な議論を呼んだものだが…自分は任天堂の判断は正しかったと考えている

 

ゲーム会社などのエンタメ企業では、自社IPの保護を徹底することは勿論、ファンの二次創作活動を上手に制御することも重要だ。ファンを野放しにし過ぎると、自社コンテンツに傷がつく可能性がある。だからといって厳しい制約を設ければ、ファンの活動が委縮してコンテンツ自体が売れなくなってしまう。

 

そうした悩ましい事情を抱えながらも、任天堂は『AM2R』が日の目を見る機会を "あえて" 残しておいたのではないだろうか?

 

短い期間ではあったが、完成した『AM2R』は多くのファンの手に渡り、そのゲーム内容を広く認知してもらえたのだ。企画・開発段階でプロジェクトを潰すことだって、不可能ではなかったハズ。熱心なファンの活動を最大限に配慮しつつ、自社IPを保護しようと努めた結果「リリース直後に公開停止」という処置に落ち着いたのだろう。

 

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公式リメイクの発表!

『AM2R』の公開停止後、自分を含めた多くの『メトロイド』ファンは意気消沈してしまった。そして前項で述べたように、任天堂に対する怒りの声が湧き上がるなど、ファンの間で不穏な空気も広がりつつあった。

 

ただ、このような事態に陥ることは、任天堂もある程度は予想していたハズ。ブランドイメージを損ねるような危険を冒してまで、絶大な支持を得ていた『AM2R』を排除しようとしたのは、いったい何故なのか…?

 

自分はこう考えた。 もしかしたら任天堂は、既に『2Dメトロイド』新作、もとい公式版『メトロイドⅡ』リメイクを制作中なのではないか?…と。

 

 

…というのも、その当時 任天堂が『2Dメトロイド』新作を開発しているのでは?という噂がチラホラあったのだ。

 

根拠を挙げよう。2014年6月には、任天堂が『2Dメトロイド』『メトロイドプライム』両方の新作を企画していることが判明していた。任天堂の高橋伸也氏が、インタビューで次のように発言している。

 

Shinya Takahashi, Nintendo:

So it has been a while since we released the last one and we're having discussions internally about what we can do next. So at this point we have two different types of Metroid games. We have the Prime style of Metroid game and we have the more traditional style of Metroid game. We feel that we do need to take care of both of these styles of play. And the hope is that at some point in the near future we'll be able to share something about them.

 

引用:Nintendo Is Planning A Future For Both 2D And 3D Metroid - Kotaku

 

2015年のE3 インタビュー記事でも、『2Dメトロイド』新作の存在を匂わせる発言がある。『メトロイドプライム』シリーズを担当する田邊賢輔氏が「坂本賀勇 (『メトロイド』の有名な開発者) が『2Dメトロイド』を制作しているが、自分はそれには関与していない」といった趣旨のコメントを残している。

 

We asked Tanabe if Metroid Prime Federation Force is the only Metroid Prime game he's working on. "I said this at the beginning, but I’m not involved in the 2D Metroid games that [Yoshio] Sakamoto works on," Tanabe said.

 

引用:E3 2015: What Metroid Prime's Producer Wants In the Next Sequel - IGN

 

…もし任天堂が『2Dメトロイド』新作を開発中なのであれば、非公式ゲーム『AM2R』を公開終了に追い込んだのは、道理に適っている。たとえファンが怒り狂ったとしても、すぐさま完成度の高い公式タイトルをリリースできれば、その信用を取り戻すことも容易だからだ。

 

また、前述のとおり『メトロイドⅡ』は、ファンの間で長らくリメイクが望まれていた。シリーズの世界観をよく知る制作側 (任天堂) も当然、その必要性を感じているハズ!そう推理した自分は、もし『2Dメトロイド』新作が来るなら『Ⅱ』のリメイクだろう!と予想していたこの辺は特に根拠は無かったんだけどね。

 

自分のこの予感は正しかった。しかも、そのお披露目は思ったよりずっと早かった。

  

 

2017年6月14日、E3 2017で 公式リメイク『メトロイド サムスリターンズ』がサプライズ発表されたのだ。『AM2R』公開停止から、約10ヶ月後の出来事である。

 

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『サムスリターンズ』発売に喜ぶキモオタの図

 

この衝撃的な発表を受けて、世界中の『メトロイド』ファンが歓喜に沸いたのだった。『AM2R』制作者のGuasti氏も例外ではなく、Twitterで喜びの声を露わにしている。

 

 

『AM2R』の公開停止が決まった際には、いずれその時が来ると常々考えてはいたものの、大きなショックを受けたというGuasti氏。だが『サムスリターンズ』の発表を受けて、1人の『メトロイド』ファンとして純粋に喜ぶことができ、気持ちに区切りがついた…と語っている。詳細は以下のインタビュー記事を読んで欲しい。

 

automaton-media.com

 

元々『AM2R』という名称には、「いずれ任天堂が公式版『Ⅱ』リメイクを開発するハズ!でも、それがいつになるかは分からない。だからまずは、自分達で "別の" リメイク (=Another Metroid 2 Remake) を作ろう!」といった意味合いも含まれていた。

 

その公式版『Ⅱ』リメイクが、満を持して発表されたのだ。Guasti氏の悲願がようやく実現したのである。『サムスリターンズ』発売直後、プレイ感想をブログに掲載しているあたり、よほど嬉しい出来事だったに違いない。『AM2R』の公開停止も無駄ではなかったのだ。

 

Guasti氏はその後、ゲーム制作会社「Moon Studios」に就職。同社の新作ゲーム『Ori and the Will of the Wisps』のレベルデザイナーとして大抜擢されたのだ。おそらく『AM2R』を完成させた手腕を買われたのだろう。

 

automaton-media.com

 

『Ori』シリーズは『メトロイド』と同じ2D探索型アクションで、ゲーマーの間でも高い評価を博している。Guasti氏が関与した『Will of the Wisps』は、シリーズ第2作目。現在 Steam / XBoxOneで絶賛配信中だ!…自分もいずれ遊ぶつもりデス。

 

 

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『AM2R』と『サムスリターンズ』の比較

ここまで読んだ方はお分かりいただけるかと思うが、奇しくもこの世界には 2つの『メトロイドⅡ』リメイクが存在することになる。有志ファンが制作した『AM2R』と、任天堂が発売した『サムスリターンズ』の2種類だ。

 

ただ、どちらも同じ『Ⅱ』を原作としたリメイクにも関わらず、両者を比較するとゲーム性が全然違うのである。ここまで差が出るのは面白い。

 

まず、非公式リメイクの『AM2R』だが、コチラは原作再現を徹底した正統派リメイクに仕上がっている。過去シリーズ作品のリスペクトや、オリジナルの新要素なんかも織り交ぜているが、それらはアクセント程度。原作『Ⅱ』のゲーム性・ストーリーの再現を、何よりも優先している印象を受ける。

 

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原作に忠実な『AM2R』

 

個人的に『AM2R』を遊んでてメッチャ感動したのは、エンディングの再現度の高さだ。

 

『メトロイド』シリーズでは、ラスボスを倒すと唐突に脱出イベントが始まるなど、ゲームの最後まで緊迫したシーンが続くことが多い。だが『Ⅱ』のエンディングだけは、他のシリーズ作品とはひと味違う

 

クイーンメトロイド (ラスボス) を倒し、すべての戦いを終えたサムスは、悠然と帰路につく。道中で出逢ったベビーメトロイドを引き連れ、頭上に広がる満点の星空を横目にしながら、スタート地点の宇宙船を目指すのだ。この静かで穏やかなエンディングは、多くのプレイヤーに強い印象を残している

 

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エンディングの再現度には感動した

 

『AM2R』では、この印象的な『Ⅱ』エンディングが見事に再現されていた。原作とは違いフルカラーの画面で、宇宙船のあるスタート地点には、最初は緑色の空が広がっている。その後、ゲーム進行に合わせて夕暮れに、ラスボスを倒すと夜空へと移り変わる。終盤では原作『Ⅱ』のような、星空が広がる静かな情景が拝めるのだ。

 

コレは一例であり、他にも 『Ⅱ』の印象的な要素は、余さずしっかり再現されている。制作陣が『メトロイド』を熟知したファンだからこそ、このような原作愛に満ちたリメイクに仕上がったのだろう。

 

 

一方、公式リメイクの『サムスリターンズ』では、原作要素がかなり希釈・削減されている。大まかな世界観・ゲーム性は踏襲しているのだが、原作再現はほどほどに、「メレーカウンター」「エイオンアビリティ」などの新機軸のシステムに傾倒している印象。もはや『Ⅱ』とは別物である。

 

原作要素が薄いのは少々寂しいが、新アクションの導入によって、敵キャラとの戦闘は原作以上にダイナミックかつ刺激的に。メレーカウンターで敵の動きを封じ、高火力の武器で怒涛の反撃!といった、クールで痛快なプレイングが楽しめる。慣れが必要だけど。

 

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新機軸の要素に特化した『サムスリターンズ』

  

また、過去シリーズ作品の設定補完に関しては『サムスリターンズ』の方が圧倒的に勝っている。これまでの『メトロイド』シリーズで整合性が取れていなかった設定を、丁寧かつ巧妙に修正しているのだ。つじつま合わせとも言う。

 

例えば「メトロイドは冷気に弱い」という設定がある。この設定を考慮した結果だろう。シリーズ第4作目の『フュージョン』では、オメガメトロイド (メトロイドの強化形態) の特効武器が氷属性の「アイスビーム」になっていた。

 

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新旧作品で設定の矛盾があった

 

だが、コレは後付けの設定。シリーズ黎明期に発売された『Ⅱ』の頃には、そんな設定は無かったので、メトロイド (幼生体を除く) に対してアイスビームが全然効かない。新旧作品の間で、大きな矛盾が生じていたのだ*2

 

コレを受けて『サムスリターンズ』では、メトロイドの有効武器に「アイスビーム」が追加されている。「メトロイドが冷気に弱い」という設定を『Ⅱ』のリメイクで改めて再定義したのだ。コレで矛盾は無くなったことになる。

 

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アイスビームが有効武器に!

 

また、『Ⅱ』の特殊なゲーム進行に関しても、納得のいく理由付けがなされている

 

『Ⅱ』の各エリアには、触れると大ダメージを受ける "謎の液体" が満ちた箇所があり、サムスの行く手を阻んでいる。規定数のメトロイドを撃破すると、原因不明の地震が発生して "謎の液体" が干上がり、次のエリアへと進めるようになる。

 

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メトロイドを倒すと "謎の液体" が無くなり、先に進める

  

この "謎の液体" の正体は「エネルギーを吸収する危険な液体」らしい。『Ⅱ』の説明書には、次のように書かれている。

 

地下は複数のエリアに分かれています。エリアとエリアの間には、エネルギーを吸収する危険な液体が存在します。地震とともにその液体が現れたり消えたりするので、隙間をぬって通過します。

 

引用:3DS VC『メトロイドⅡ RETURN OF SAMUS』取扱説明書 P.23

 

だが、ゲーム中ではこの液体についての解説は一切無い。そもそも、何故メトロイドを倒すと地震が発生するのか?どうして地震が起きると液体が無くなるのか?…と疑問は尽きないのだが、当時の資料には、この謎に対するアンサーは全く見受けられないのだ。演出といえばそれまでだが。

 

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『AM2R』では「マグマ」になっている

 

非公式リメイクの『AM2R』では、この液体は「マグマ」と解釈されていた。確かに『メトロイド』シリーズではお馴染みの危険物質だし、地震によって満ち引きが発生するのにも納得がいく。

 

だが、この解釈は『Ⅱ』の公式設定と矛盾している。マグマは「エネルギーを吸収する液体」とは言い難いだろう。ついでに言うと、メトロイドを倒すと地震が発生する…という謎の因果関係についても、結局よく分からないままだった。

 

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『Ⅱ』公式設定をリファイン!

 

一方『サムスリターンズ』では、この液体は「特殊溶解液」と名付けられ、マグマでない別の物質として再定義されていた。原作『Ⅱ』の設定を意識して、新解釈でリファインしているのが見て取れる。

 

さらに、メトロイドを倒して入手したDNAを「封印の像」に収めることで、液体が満ち引きする…というゲーム仕様に変更された。この「封印の像」は、鳥人族 (惑星の先住民) が設置したデバイス。暴走したメトロイドを溶解液の下に沈めて、封印するために開発されたらしい。

 

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かなり凝った新設定が追加された

 

シリーズの世界観を壊さず、原作の粗を無理なく修正した良改変と言えるだろう。地震によって液体が満ち引きする『Ⅱ』の謎設定と比べて、かなり "それっぽい" 感じに改変されたのではなかろうか。

 

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大胆なアレンジを加えた意欲作だ

 

このように『サムスリターンズ』は単なる『Ⅱ』リメイクではなく、公式だからこそ可能な "大胆なアレンジ" を盛り込んだ、斬新で画期的なリメイク作品となっている。おそらく、今後のシリーズ展開を見据えた上で、このようなゲーム内容にしたのだろう。

 

もはや『Ⅱ』とは別物といっても過言ではないが、ベビーメトロイドとの出逢いなど、大事な要素はしっかりと抑えてあるので安心だ。たとえ原作『Ⅱ』をプレイ済みでも、予想外で刺激的な体験ができるのも、本作の優れたポイントだろう。

 

 

…こんな感じで『AM2R』も『サムスリターンズ』も、両方ともに良い部分があり、どちらも優れたリメイク作品のように感じる。自分はどっちも大好きだ。みんなちがって、みんないい。

 

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まとめ

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『AM2R』は、『メトロイド』シリーズの歴史を語る上で不可欠な存在と言えるだろう。ゲームの完成度が高く、それゆえに版権・ファンメイドの在り方について、様々な議論を呼んだのだった。今後も『メトロイド』ファンの間で、その伝説 (?) が語り継がれるに違いない。

 

なお、表向きでは公開停止となっている『AM2R』だが、実は現在もダウンロード&プレイが可能だったりする。データを隠し持っていたファンが、こっそりと再配信しているのだ。ググれば多分すぐに見つかる。

 

あまり大きな声でオススメはできないのだが、興味を持った人は遊んでみてもイイかもしれない。ただし、任天堂非公認の二次創作ゲームという点には注意しよう。

 

※キーボード操作でも遊べなくはないが、複雑なアクションが要求される場面も多いので、個人的にはゲームパッドの使用を推奨したいレトロタイプのコントローラーがオススメ。

 

 

さらに驚くべきことに『AM2R』の開発は継続して行われていて、大幅にグレードアップしている。Guasti氏率いる本来の制作チームではない、別の有志ファンによって独自に開発が引き継がれているのだ。

 

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テキストの日本語化も可能に!

 

正式版 (~v1.1) で確認されたバグの修正は勿論、グラフィックの改良やテキストの翻訳、特殊なゲームモードの実装など、様々な要素が追加され、ゲームプレイがより快適になっている。テキストが日本語化できるのは、日本人には嬉しい改良点だろう。

 

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「FUSIONモード」も実装されている


他にも高難易度モード「FUSIONモード」の実装など、公式リメイク『サムスリターンズ』を意識した要素もドンドン増えていて、今や究極のファンゲームに進化しつつある。この辺の詳細は、有志ファンサイト「AM2R Database」を確認して欲しい。

 

…だがしかし、『AM2R』は非公式リメイク作品。まずは、任天堂の公式リメイク『サムスリターンズ』を遊ぶべきだろう。あくまでコッチが『メトロイド』シリーズの正史になるワケですし。

 

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『サムスリターンズ』はいいぞ

 

「メレーカウンター」「エイオンアビリティ」などの新アクションを主軸とした戦闘・アクションが最高なので、未プレイの方は是非遊んで欲しい。特にラスボス戦は『メトロイド』ファンなら誰しも "燃える" ハズである。リメイク元の『メトロイドⅡ』も超オススメだ。どっちも3DSで遊べるぞ!

 

 

(ただ…そろそろ『2Dメトロイド』新作が欲しい。任天堂さん…是非ともSwitchで完全新作をお願いします…)

 

*1:一応、2010年に発売された『メトロイド アザーエム』にも、部分的に2Dシリーズの要素が導入されている。だが、実際は "2.5Dアクション" とでも言うべきゲーム内容で、3D空間を移動する場面が多かった。従来作とかけ離れたゲーム仕様のため、2D新作と言うべきかは悩ましいところ。

*2:『フュージョン』に登場するオメガメトロイドには「研究で人工的な生体調整が施され、幼生体から一足飛びに進化した」という設定がある。そのため、この研究の弊害によってアイスビームが弱点になったのではないか?…と推察されたりしていた。