また良いゲームに巡り会えた。『Panzer Paladin (パンツァーパラディン)』である。
カナダのゲーム制作会社 Tribute Games が開発した、レトロスタイルの新作アクションゲームだ。日本語にも対応していて、Nintendo Switch と Steamで配信中。自分はSwitch版を購入した。
このゲームを知ったきっかけは、ファミ通公式Twitterの以下のツイート。TLをダラダラ眺めていた自分は、本作のオープニング映像 (動画の冒頭部分) に心を奪われたのだった。
『パンツァーパラディン』往年の日本のアニメとアクションゲームにオマージュを捧げまくったドット絵プラットフォームアクションがSwitch/PCで登場https://t.co/QTQ31pxWpg pic.twitter.com/HWjQVZQX4E
— ファミ通.com (@famitsu) 2020年7月21日
そう、カッコイイ巨大ロボットが主人公なのだ。今どき珍しい。
操縦する女性キャラの雰囲気といい、昔懐かしい80~90年代のロボットアニメ感が強いのも心惹かれる。『聖戦士ダンバイン』や『機甲界ガリアン』など、往年の名作アニメを彷彿とさせるビジュアルだ。
幼少期より幾多のロボットアニメ・特撮作品を見て育った自分は、このプレイ映像を見て、否が応でも血が滾るのであった。コレは "買い" だな。間違いない。
7月22日の配信開始と同時にダウンロード。クリアするまで遊んでみたのだが、自分の直感は正しかった。ビジュアル面はさることながら、ゲーム内容も意外と面白くて、プレイ後の満足度が高い良作タイトルだった。エンディングで制作者の愛を感じたよね。
Panzer Paladin、ひとまずクリアした #NintendoSwitch pic.twitter.com/lf6dRHDkfj
— わたりどりぃ (@Wata_Ridley) 2020年7月31日
今回はそんな感じの『Panzer Paladin』について、プレイ感想など交えながら、簡単にレビューしていきたい。ロボ好きは勿論のこと、古き良きアクションゲームが大好きな方にもオススメである。
往年のロボットアニメ風デザイン
記事冒頭でも述べたとおり『Panzer Paladin』では、往年の日本アニメを強く意識したデザインが目立つ。最近のアニメでは見かけないタイプの、どこか懐かしい感じの絵柄。
ゲーム中のグラフィックは、すべてドット絵で描かれていて、ファミコン・PC88などのレトロゲーっぽい印象。この時代錯誤な感じがたまらない。
本作の開発メンバーの1人、Jean-Francois Major氏の言によると、彼らが慣れ親しんだ日本のゲーム・アニメのリスペクトを盛り込んだという。ビジュアルに関しては、欧米で人気の高い『パワーレンジャー (スーパー戦隊)』『ヴォルトロン (百獣王ゴライオン)』などの影響が特に強いらしい。
――本作が影響を受けた作品はありますか?
Major氏:
何より、本作における剣を使ったプレイは『リンクの冒険』から影響を受けています。
他には『超惑星戦記 メタファイト』シリーズや昔の『ロックマン』からの影響もありますし、ゲーム以外ですと「スーパー戦隊シリーズ」や「ヴォルトロン」「UFOロボ グレンダイザー」の影響もあります。
引用:目標は、『リンクの冒険』を超えるものを作ること―ファミコン風ACT『Panzer Paladin』開発者ミニインタビュー - Game*Spark
本作ではゲームの合間にカットシーンが挿入され、物語が進められていく。海外製のゲームだが、テキストの日本語翻訳は完璧で、全く違和感なく遊べる。地味に嬉しいポイント。翻訳が気になるインディーズゲームって多いのよね。
ストーリーも往年のロボットアニメを思わせる、王道的な展開。凶悪な「ラヴェナス」率いる魔物軍団が、地球侵略を開始!悪の野望を打ち砕くため、人類最後の希望、正義のパワーアーマー「グリット」が立ち上がる!…といった物語になる。
主人公機「グリット」は、パラディン型のパワーアーマー。科学技術の粋を結集して開発した、人類が誇る最終兵器である。人間が乗り込んで操縦するタイプのロボだが、なんか普通に喋る。勇者ロボみたいだなお前。
もう1人の主人公、グリットの操縦者「フレイム」は、救助用に開発された女性型アンドロイド。超人的な身体能力に加えて、人類を救いたい!という熱いハートを持ち合わせている。人間味の強い熱血アンドロイドだ。おっぱいと髪型のボリュームが凄い。
主人公に協力してくれる脇役も、往年のアニメ作品に出てきそうな懐かしい雰囲気で、個性的なキャラが多い。ゲーム攻略に役立つ重要テクニックなんかも教えてくれるぞ。
王道的なストーリー!と先に紹介したが、意外とシナリオは凝っていて、物語の途中で衝撃の事実が判明する。さらに本作ではマルチエンディングが採用されていて、複数のエンディングが用意されていて、条件分岐ではバッドエンドにもなりえる。真相は…自分の目で確かめてみて欲しい。
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キャラを交代して進む正統派アクション
『Panzer Paladin』は、正統派スタイルの2Dアクション。残機制のゲームで、穴に落ちたり、体力ゲージが0にならないよう注意しながら、ステージクリアを目指していく。
主人公機「グリット」は、『リンクの冒険』をリスペクトした操作感。近接格闘が得意なキャラで、剣などの武器で敵を攻撃したり、シールドで身を守ったり。バックステップを使って、敵の攻撃をサッと回避することも可能だ。
このゲームでは基本的に、グリットを操作して進んでいく。アクションが豊富で打たれ強いが、全体的に動作が重たく、瞬発力にはやや欠ける。巨大ロボを操縦している感が見事に再現されている…と言えなくもないが、操作に慣れが必要かも。
『ブラスターマスター ゼロ』のように、操縦席から降りた「フレイム」を操作する場面も。搭乗型メカの設定を活かしたキャラ交代システムで、プレイヤーの任意で操縦席を降りられるのだ。大破したグリットから脱出して行動を続行!…なんてこともできる。
フレイムは俊敏性に優れるほか、狭い通路をスイスイ進める。ムチを使って敵を攻撃したり、ワイヤーアクションで障害物を突破できるなど、グリットとは全く異なるキャラ性能だ。フレイムに交代しなければ、進めない箇所も多い。
だが、フレイムは耐久力が低く、敵の攻撃に滅法弱い。また、グリットから一度降りると、特定の復活ポイントに辿り着くまでキャラ交代できない!という大きなデメリットもあるので、状況に応じて操作キャラを使い分けることが重要になってくる。
『Panzer Paladin』には、いくつかのゲームモードがある。メインとなる「ストーリーモード」では、ステージ選択画面から世界各国に飛び、その国を支配するボスを倒していく。『ロックマン』とよく似たスタイル。
ストーリーモードでは、全13種類のステージが用意されていて、思った以上にボリュームがある。どのステージも際立った特徴があり、様々なギミックが組み込まれていて、なかなか歯応えのある難易度だ。アクションゲームの定番要素は大体揃っている印象。
ステージの最後に現れるボスは、どれも個性的で強敵揃い。固有のスキルを持ってたり、動作が異常に素早かったり…道中のザコ敵とは明らかに格が違う。プレイヤーの技量が試されること間違いなし。
…こう書くと「高度なアクションが要求されるのでは?」と不安を感じる人も多いと思うが、全く心配はいらない。このゲームでは「武器」が大きなテーマになっていて、武器を上手に活用すれば、ボス戦を制することも容易い。以下、簡単に説明したい。
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武器を拾って戦う!そして壊す!
『Panzer Paladin』では「武器」を使ったアクション・戦略が重要になる。ゲーム開始時のグリットは、盾以外の装備を持たず、リーチが短めのパンチしか攻撃手段が無い。戦えなくはないが心もとない。
武器は現地調達で入手する。道中で拾ったり、敵を倒して奪い取った武器を、ガンガン使い回していくのだ。各ステージのボスを倒せば、強力な武器もゲットできる。
このゲームでは100種類以上の武器が用意されていて、それぞれ属性・威力・リーチなどが微妙に異なる。カナダでは「ホッケースティック」、日本では「刀」といった具合に、各ステージの特徴が反映された武器も多く、視覚的にも楽しい。
武器は最大4つまで装備可能で、それ以上 入手した場合は「ストレージ」に自動転送・ストックされる。ストックした武器は自由に脱着でき、次のステージに持ち越すことも可能だ。武器をジャンジャン集めて、攻撃手段を増やしていこう。
ただし、本作の武器は使い捨ての消耗品。使い続けるうちに摩耗していき、「耐久性」の数値が0になると、壊れて使用不能になるのだ。手持ちの武器を上手にやりくりすることが、ゲーム攻略のカギになる。
武器を投げて遠くの敵を攻撃することも可能で、命中すればかなりのダメージを与えられる。だが、敵にぶつけた武器はすぐに壊れるので、使いどころは慎重に。
この「武器を拾って壊れるまで使い潰す」というゲーム性は、『ゼルダの伝説 BotW』などに似ている。だが、本作にはオリジナリティの高い要素もある。それは、武器の自壊アクションだ。
各武器には「スペル」という特殊効果が設定されていて、プレイヤーが任意で武器を破壊することで、効果が発動する。武器を使い潰して壊すのではなく、特定のコマンド操作で "自壊" させるのだ。
MP消費型ではなく、武器を捨てて発動するタイプの魔法…と言えば、イメージしやすいかもしれない。「攻撃力アップ」「防御力アップ」などのバフ効果や、「強回復」などの体力回復、広範囲攻撃を発動する「サンダー」など、様々な効果のスペルが用意されている。
ゲーム中では何故かサラッと紹介される程度だが、この自壊アクションは超重要テクニック。スペルの使用有無によって、ゲーム難易度が大きく左右されるのだ。
特にボスとの戦闘では、全体攻撃・体力回復などの効果を持つ武器を、どれだけ所持しているかが勝敗を分ける…といっても過言ではない。武器を集めて温存し、ここぞという時に強力なスペルを発動!といったプレイングをオススメしたい。
武器の用途は他にもある。例えば、道中の「チェックポイント」の有効化にも武器が必要だ。手持ちの武器を台座にブッ刺すことで、進行状況のショートセーブができる。
このゲームでは一度死ぬと、ステージの最初からやり直しとなってしまうので、チェックポイントは絶対に活用すべきだと思う。手持ちの武器が少ない場合は、武器を取るかセーブを取るか、苦渋の決断を強いられることになるが。この辺の駆け引きも面白い。
持ち帰った武器を「ラボ」で消費して、体力ゲージを強化することも可能だ。気休め程度の上昇率ではあるが、やっておいて損は無い。ゲーム序盤は武器を集めまくって、ジャンジャン強化に回そう。
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オリジナル武器を作ってシェア!
武器をテーマにしたゲーム性が売りの本作だが、なんと武器を自作することも可能だ。「鍛冶モード」でドットを打ち込み、ユーザーが自由に武器をデザインできる。
武器の見た目は勿論、ポイントを消費して、詳細なステータス・スペルなども細かく設定できるのだ。コレが結構楽しかったり。自分もハンマーとか作って遊んだ。
Twitter や Steamコミュニティを覗くと、この武器エディットを楽しんでいる人は結構多い様子。カッコイイ武器は勿論のこと、ペットボトル、抱き枕、スイカバーなど、ネタに走った大喜利デザインも散見される。自由度の高さが伺えますな。
ユーザーが作成したオリジナル武器は、オンラインで不特定多数のユーザーにシェアされるのだが、この共有方法がユニーク…というか結構変わっている。
本作ではステージの中間地点に差し掛かると、宿敵「ホースマン」との戦闘イベントが発生することがある。このライバル戦に勝利すると、報酬としてオリジナル武器が貰えるのだ。貰える武器はランダムで、何が出るかはホースマンを倒すまで分からない。自分の予想斜め上を行った、ヘンテコ武器が貰えたりする場合も。
自分が作ったオリジナル武器が、どこかの誰かに使われている。意外性があって面白いオンライン共有機能と言えるだろう。せっせとギャグ武器を作成・共有して、世界中の人々を困惑させるのも一興だろう。自作した武器を、制作者自身が使えないのはチョット残念だが。
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ロボ好きにオススメの良作
『Panzer Paladin』…自分のような懐古主義的ロボオタクには、ドストライクな良作ゲームだった。際立って斬新な要素は無いものの、非常に丁寧に作られていて好印象。一昔前のロボットアニメ・2Dアクション成分に飢えている方にはオススメである。
救済措置が多くて難易度が下がった『ロックマン』…というのが個人的な総評。普通に遊ぶとチョイ難しいが、ステージを周回して武器を集めれば、どんな人でも必ずクリアできるよう設計されている。ゲーム下手な自分には、丁度イイ塩梅に感じられた。
逆に武器を集めなければ、一気に難易度が跳ね上がるので、腕に自信のある人は縛りプレイに挑戦するのもアリだろう。クリア後には、ボスと連戦する「トーナメントモード」などが解禁されるので、上級者でも十二分に楽しめるハズだ。
そして何よりも、キャラを動かしていて楽しく感じられるのが非常に良い。アクションゲームでは大事なポイントだと思う。強いて言えば、もう少し武器のバリエーションが欲しかったかな。
気になるお値段は 2000円。単発のインディーズタイトルにしては、少々強気な価格設定ではある。今後セールで安くなる可能性もあるので、値段高ッ!と感じた人はそこを狙った方がイイかもしれない。個人的には価格相応に楽しめたけどね。
また、本作のサウンドトラックも絶賛配信中。アクションゲームに相応しい、アップテンポでノリノリな楽曲が多いので、興味を持った人は是非買い支えよう。自分も買ってしまった。Steam経由で買うとメッチャ安いのでオススメ。
ひとまず、ストーリーモードをクリアした自分だが、実績の全制覇がまだ終わっていない。帰るまでが遠足、スタッフロールを最後まで観るのが映画。そして、実績を全部埋めるまでがゲームなのだ。ここは絶対に外せないポイントである。
しかしながら、実績リストをよく見ると「隠された宝を全部見つける」「タイムアタックのゴールドランクを取得する」など、ゲーム下手な自分には結構キツイ感じの項目も多い。
だが、弱音を言ってられないだろう。今後も他のゲームを楽しむ傍ら、気が向いたときに『Panzer Paladin』を遊んでみて、実績の全制覇を目指していきたい。大丈夫、きっと上手くいく (キャプテン A・エグゼター)